佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

偉大なる、しゅららぼん

 とはいえ、せっかくの入学式を味気ないものにするのはゴメンなので、何とか気分を奮い立たせようと、

「高校生になったのだから、ぜひとも彼女がほしいな。自転車で二人乗りして、追い抜いた男子中学生に、嫉妬と羨望のまなざしを向けさせたいな。おっとその前に、付き合い始めの頃、缶ジュースを飲んでいたら、ちょっとくれる? といきなり横取りされて、ドキドキしてみたい。さらにその前に、告白される二日前くらいかな、あのさあ、日出って好きな子いるの? と異様な緊迫感のなかでさぐりを入れられたい。ああ、琵琶湖の神様。どうか、かわいい子といっしょのクラスになりますように」

                                (本書P60-P61より)

 

偉大なる、しゅららぼん』(万城目学・著/集英社文庫)を読みました。

まずは出版社の紹介文を引きます。


高校入学をきっかけに、本家のある琵琶湖の東側に位置する石走に来た涼介。本家・日出家の跡継ぎとして、お城の本丸御殿に住まう淡十郎の“ナチュラルボーン殿様”な言動にふりまわされる日々が始まった。ある日、淡十郎は校長の娘に恋をするが、その直後、彼女は日出家のライバルで同様に特殊な「力」をもつ棗家の長男・棗広海が好きだと分かる。恋に破れた淡十郎は棗広海ごと棗家をこの街から追い出すと宣言。両家の因縁と三角関係がからみあったとき、力で力を洗う戦いの幕が上がった――!


 

 

人は圧倒的な力を我が物にしたとき品性が露わになる。たとえば、それは金持ちに高貴な者と品性下劣な者、2種類の金持ちがいることと同じことだ。人を有無を言わせず従わせ、場合によっては人をひねり潰すことができるほどの力を持ったとき、その力を行使するか否か、行使するとしてどのように使うか、その人の品性が問われるということだろう。この小説は面白い。題名の奇抜さにおいても、面白さにおいても『鴨川ホルモー』とともに万城目ワールドの双璧をなす。次は姫路城を舞台にした物語を書いて欲しいなぁ。