佐々陽太朗の日記

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『管見妄語 大いなる暗愚』(藤原正彦・著/新潮文庫)

『管見妄語 大いなる暗愚』(藤原正彦・著/新潮文庫)を読みました。

まずは出版社の紹介文を引きます。

郵政民営化も時価会計も医療改革も市場主義万能論も米国の策略である。Jリーガーよ、紳士たれ。政治家は国民に迎合するな。プロフェッサー藤原は、日本人に警鐘を鳴らす一方で、ギョウザ、英国人の美風、文語、浮世絵、健気な教え子、ひばりの歌……、素晴らしいものは褒めちぎる。勿論、自らの魅力に満ちた風貌と人格を自覚し、ハニートラップへの注意も怠りないのであった。

 

管見妄語 大いなる暗愚 (新潮文庫)

管見妄語 大いなる暗愚 (新潮文庫)

 

 

「大いなる暗愚」とはあるいはマスコミのことでもあるのだろう。著者が「はじめに」に書いていらっしゃる次の一節「もし本書に新しい視点が少しでもあったとしたら、それはいつも本質を外しておいてくれるマスコミの親切のおかげである」は痛烈な皮肉である。民主主義の見苦しさ、国民の目線に立った政治などというポピュリズムのあさはか、移ろいやすく無責任な民意、優秀な官僚を使いこなせない無能な政治家、民主党に見る薄っぺらな人気取り政策、短期的な利益にしか興味のない投資家、自国の都合を世界に押しつけるアメリカ等々、世の中は忌々しいことばかり。しかしそれを一刀両断に切って捨てる著者の文章の小気味良さに胸のすく思いでした。