2021/04/02
『羽州ぼろ鳶組 襲大鳳 上・下』(今村翔吾:著/祥伝社文庫)を読みました。
まずは出版社の紹介文を引きます。
【上巻】
大気を打ち震わす轟音が、徳川御三家尾張藩屋敷に響く。駆け付けた新人火消の慎太郎が見たのは、天を焼く火柱。家屋が爆ぜたと聞き、慎太郎は残された者を救わんと紅く舞い踊る炎に飛び込んだ―。新庄藩火消頭松永源吾は、尾張藩を襲った爆発を知り、父を喪った大火を思い出して屈託を抱く。その予感は的中。源吾の前に現われたのは、十八年前の悪夢と炎の嵐だった。
【下巻】
強く澄んだ眼差しは、火消のそれだった―。新庄藩火消頭“火喰鳥”松永源吾は、尾張藩中屋敷を襲う猛火の中、もう一人の鳳と邂逅を果たす。火事が特定の人物を狙った謀殺と看破した源吾だったが、背後には巨悪の影がちらつく。ぼろ鳶組の面々、同期の火消たち、そして妻深雪と子平志郎との絆が、源吾を一個の火消たらしめる。技を、想いを、火消の意志を繋げ!
「英雄、英雄を知る」とは確か吉川英治の『三国志』だったか。蝗の秋仁(町火消よ組・頭)、九紋龍の辰一(町火消に組・頭)、縞天狗の漣次(町火消い組・頭)、八咫烏の大音勘九郎(加賀藩火消<加賀鳶>・頭取)、菩薩の進藤内記(八重洲河岸定火消・頭取)、そして火喰鳥、松永源吾(新庄藩火消<羽州ぼろ鳶組>・頭取)。共に青き春を過ごし、火消しの才を花開かせた「黄金(こがね)の世代」だ。いずれ劣らぬ英傑たちがうちそろって火焔に立ち向かう。「武将の大事な資格のひとつは、果断に富むことである」これも吉川英治の『三国志』だが、それは火消にこそ当てはまる。焔との戦いは命と男の意地をかけた戦だ。千両役者が一人、また一人と登場し獅子奮迅の働きを見せる姿に高ぶりを抑えきれず喝采を贈った。