佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

2019年6月の読書メーター

 先月から羽州ぼろ鳶組シリーズを読み続け、とうとう既刊第8巻『玉麒麟』まで読み終えてしまった。そろそろ禁断症状が現れ始めている。禁断症状を抑えるため北方謙三氏の『水滸伝』(全19巻セット)を買ってしまった。今村翔吾氏にはぼろ鳶組シリーズの続編を早く上梓していただきたい。

 

6月の読書メーター
読んだ本の数:10
読んだページ数:3799
ナイス数:1784

モモンガの件はおまかせを (文春文庫)モモンガの件はおまかせを (文春文庫)感想
ペットを巡る人間の身勝手ゆえの問題。これは結構深刻な問題である。その問題を真正面から取り組みながら、軽妙な語り口、登場人物の掛け合いがユーモラスで重くならず、ミステリ小説として存分に楽しませてくれる。お見事としか言いようがない。  相変わらず鴇先生は魅力的で今巻でも大活躍だが、今巻で特に爬虫類担当の服部君とその愛犬・ディオゲネスの活躍が目立った。変態服部君の無駄な知識も笑える。 
読了日:06月24日 著者:似鳥 鶏


ウルフ・ムーンの夜 (ハヤカワ・ミステリ文庫)ウルフ・ムーンの夜 (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
私立探偵アレックス・マクナイト・シリーズ第二弾。アレックスは自分は私立探偵をやめたと言い張っているが、助けを求める人を目の前にして放っておくことなどできない。優秀な(?)相棒(?)も現れた。すくなくともこの相棒は「あんぽんたん」などではない。いけ好かない野郎とおもっていたメイヴン署長が案外味のある男だったことにびっくり。今後の展開が楽しみ。シリーズ第三弾『狩りの風よ吹け The Hunting Wind』も読まねばなるまい。
読了日:06月22日 著者:スティーヴ ハミルトン


背いて故郷 (新潮文庫)背いて故郷 (新潮文庫)感想
志水辰夫氏の初期三部作と称される一作。やはりラストの叙情性がたまらない。シミタツ節全開である。主人公が男くさい。というかオッサンくさい。しかも面倒くさい性格でもある。直木賞候補には挙がったらしいが、そのあたりに難があったかと思う。しかし、それにしてもシミタツらしい。好きだなあ。
読了日:06月21日 著者:志水 辰夫


如何なる星の下に (講談社文芸文庫)如何なる星の下に (講談社文芸文庫)感想
がっかりである。舞台は昭和10年代の浅草。浅草に仕事部屋を間借りした中年作家・倉橋が別れた妻への未練を持ちつつ、踊り子の少女に恋慕の情を抱く。浅草の芸人や物書きたち、その他住民との交流、浅草の持つ混沌の不思議な魅力とそこに住住む宿命への諦念を前衛的・実験的な手法で描いたということなのだろう。  私小説だかプロレタリア文学だか知らないが、ぐだぐだと無秩序に書き殴った文章は読みづらく美しさのかけらもない。安っぽいヒューマニズムなどまっぴらごめんだし、自己憐憫のニオイがプンプンというのはいただけない。
読了日:06月18日 著者:高見 順


ブックのいた街 (祥伝社文庫)ブックのいた街 (祥伝社文庫)感想
犬好きと猫好き。やっぱり私は犬が好きだ。犬の心には”献身”がある。いとおしいではないか。私は生き物を飼うことをしないと心に決めている。かわいがるだけの十分な時間がとれないし、なんといっても死に別れるのがいやだから。しかし、本書を読んで犬を飼いたくなった。狂おしいほど飼いたくてたまらなくなってしまった。この気持ちを抑えきることができるかどうか、不安である。良い物語を読ませていただきました。ほんとうにじんわり心が温まりました。
読了日:06月14日 著者:関口尚


玉麒麟 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)玉麒麟 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)感想
満を持して鳥越新之助が主役に登場。と言っても豪商一家惨殺及び火付けの下手人として逃走し失踪するというとんでもない展開。窮地に追い込まれながらも一人で立ち向かう新之助とそんな新之助を信じてなんとか真相を突き止めようとするぼろ鳶組の面々。いや新之助を信じて疑わないのは他の火消も同じ。若き日の長谷川平蔵鬼平)の探索も冴え、事件の真相に迫っていく。失踪中の新之助を描く場面、何が起こっているのかわからないまま事件を探り新之助を助けようとする火消したちや平蔵を描く場面、それぞれをカットバックの手法で描いたは見事。
読了日:06月13日 著者:今村翔吾


狐花火 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)狐花火 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)感想
前巻『夢胡蝶』で田沼によって語られた問「千人の籠る屋敷、一人が暮らす小屋、どちらかしか救えぬならば、お主はどちらを救う」に対する答えが今巻での源吾の行動であろう。それは一つの答えであり、誠実な生き方、あるいは死に方に違いない。しかし本当にそれで良いのか。松永源吾は妻・深雪、子・平志郎にとって、さらにぼろ鳶組の面々にとってかけがえのない存在だ。もはや蛮勇をふるって死んでも良い存在ではない。源吾が最終的にどのような答えに至るのか興味津々である。このシリーズが描くのは「死に様」ではなく「生き様」であるはずだ。 
読了日:06月12日 著者:今村翔吾


夢胡蝶 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)夢胡蝶 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)感想
前巻では新之助と武蔵の活躍にスポットがあたったが、今巻ではぼろ鳶の纏番・彦弥が主役級の扱い。女好きの色男の彦弥ゆえ、どうしても軽薄なイメージがついてしまい脇役に甘んじていた彦弥だが、ところがどっこい根っこの部分で純なところがあった。「女の頼みは断らねえ」という意気や良し。流石、女心への寄り添い方は堂に入っている。
読了日:06月09日 著者:今村翔吾


菩薩花 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)菩薩花 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)感想
今巻で光ったのは麒麟児と称される新庄藩火消の頭取並・鳥越新之助一刀流が冴え渡る。前巻でほとんど出番がなかっただけに、今巻での活躍はめざましくまぶしいほどだ。ただ番付には殆ど影響しなかった。作者は新之助をこのような形でいじってかわいがっていると見える。それは深雪が新之助をいじるやり方と同じだ。存分にかわいがっている。(笑)  本シリーズは「ぼろ鳶組」であるが、深雪シリーズの様相を呈してきた。おそらく男女に共通して支持されるキャラだろう。深雪が登場する場面を楽しみに読み進める読者も多いに違いない。
読了日:06月05日 著者:今村翔吾


鬼煙管 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)鬼煙管 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)感想
火喰鳥の異名を持つ新庄藩火消頭・松永源吾と心を通じ合わせる長谷川平蔵は『鬼平犯科帳』(池波正太郎)の描く鬼平こと火付盗賊改方長官長谷川平蔵の父である。今巻ではその鬼平の若き頃、銕三郎と呼ばれていた頃のエピソードが織り込まれた物語。序章と終章に描かれた長谷川平蔵宣雄と銕三郎(後の鬼平)の心のふれあいが泣かせる。「魁」の異名を持つ武蔵と六代目平井利兵衛・水穂に恋愛フラグが立ったか。次作が楽しみ。
読了日:06月02日 著者:今村翔吾

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