佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『ドミノin上海』(恩田陸:著/角川文庫)

2023/03/26

『ドミノin上海』(恩田陸:著/角川文庫)を読んだ。

 まずは出版社の紹介文を引く。

神様だって、止められない。たった一日で運命のドミノが倒れ始める!

「『蝙蝠』が上海に入った」。豫園からほど近い路地裏の骨董品店に緊張が走った。門外不出のお宝が闇のルートで輸入されたのだ。虎視眈々と狙う店主だが、なぜか問題の品は、人気急騰中のホテルの厨房に流れ着いていた……。かつて東京駅で数奇な運命を共にした面々に、一癖も二癖もある人物たち、さらには動物園脱出を目論むパンダも加わって、再び運命のドミノが倒れ始める! 予測不可能、爆笑必至のパニックコメディの金字塔!!

 

 

 久しぶりに恩田陸氏の小説を読んだ。それも『ドミノ』の続編。私は『ドミノ』を2008年の5月に読んだのだが、それが書かれたのは2000年頃のこと。そして本書『ドミノin上海』は2011年から2019年にかけて『小説野性時代』に書かれ、一冊の本として上梓されたのが2020年2月、文庫化が2023年2月というのだから構想10年以上、長期連載というおそろしく壮大な物語である。

 壮大といえば前作『ドミノ』では主な登場人物が27人と1匹いたのだが、今作『ドミノin上海』では25人と3匹、しかも舞台を日本から中国上海に移し、登場人物の国籍も日米中とワールドワイドになり、3匹の中にはパンダが含まれるという気宇壮大なものとなっている。

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 上記リンク先(2008年5月17日書評ブログ)に書いたとおり、前作『ドミノ』はいわば「合縁奇縁・阿鼻叫喚・一気呵成・右往左往・紆余曲折・各人各様・奇想天外・急転直下・狂瀾怒涛・元気溌剌・才気煥発・多士済々・多事多難・波瀾万丈・抱腹絶倒」的小説であった。そして今作『ドミノin上海』はそれに加えて「気宇壮大・日中友好・奇々怪々・咄咄怪事・狂瀾怒濤・形勢一変・連鎖反応・予測不能・邂逅相遇・天佑神助・三界流転」的小説であると言っておこう。これを読んでも何のことだかわからないだろうが、そんな小説なのだから仕方がない。そしてやはり「袖振り合うも多生の縁」的小説であることは変わりない。これほど圧倒的楽しさをもった小説はめずらしい。恩田氏の希有な才能に脱帽するしかない。