2023/12/16
『超短編!大どんでん返しSpecial』(森見登美彦ほか:著/小学館文庫)を読んだ。
まずは出版社の紹介文を引く。
人気シリーズ第2弾。34のさらなる驚き!
2000字で世界を反転させる大ヒット“超”短編アンソロジー、シリーズ第2弾!
彼氏に飢えるわたしの食卓、好みのタイプの女のあとをつける俺、オンラインでの家族飲み会──4分後、まったく別の景色があなたを待っている!
ミステリー、SF、ホラー、歴史時代、恋愛などなど、多彩な作家陣は以下の34名。
浅倉秋成、麻布競馬場、阿津川辰海、綾崎隼、一穂ミチ、伊吹亜門、伊与原新、小川哲、織守きょうや、加藤シゲアキ、北山猛邦、京橋史織、紺野天龍、佐川恭一、澤村伊智、新川帆立、蝉谷めぐ実、竹本健治、直島翔、七尾与史、野崎まど、乗代雄介、藤崎翔、万城目学、真梨幸子、宮島未奈、桃野雑派、森晶麿、森見登美彦、谷津矢車、結城真一郎、柚月裕子、横関大、芦花公園(五十音順・敬称略)。
2,000字の超短編アンソロジー。シリーズ第二弾なのだそう。第一弾は読んでいない。なぜ第二弾から読んだのかといえば、森見登美彦氏の「新釈『蜘蛛の糸』」が収録されているからである。私は登美彦氏の文章に飢えていた。新刊がなかなか出ない。それだけではなく、ブログもここ一年ほど更新されていなかったのだ。そのブログが先月末に久々に更新された。そのブログには長く執筆に難渋し、巨大な暗礁に乗り上げていた新作『シャーロック・ホームズの凱旋』が完成し来年の1月22日にめでたく発売予定であることが書かれていた。登美彦氏曰く「またしても怪作になったが、そんなことは心底どうでもいい。完成するなら何でもいい。完成こそ正義である」。ありがたや。やっと登美彦氏の小説が読める、読めるならなんでもいいと即刻購入を予約したのは言うまでもない。しかしそれを読むには来年まで待たねばならない。登美彦中毒の禁断症状は今や狂おしいほどまで昂じており、待ったなしだ。幸いなことにそのブログにはもう二つのお知らせがあった。12月6日に本書『超短編!大どんでん返しSpecial』が発刊され、その前日12月5日には登美彦氏の「夏の夜を味わう山上レストラン」と題したエッセイが収録された『私の名店』というエッセイ集がポプラ社から発刊されると書いてあったのだ。幸いかな。年明けまでその2冊でつなごうと矢も楯もたまらず購入したのであった。そんな事情なので本書の巻頭を飾る登美彦氏の短編「新釈『蜘蛛の糸』」が読めればそれで良かった。しかしそんなもったいないことは私の経済観念の許すところではない。収録された34編をすべて読み終えた。すべての作品にレビューをつけることもできるが、それも面倒だ。私好みの数編にひとくちコメントをつけておく。
- 「新釈『蜘蛛の糸』」(森見登美彦:作)
読めれば良い。登美彦氏を読むことこそが目的であり正義である。 - 「矜持」(小川哲)
「矜持」があるかどうか。人の価値はそれで決まる。最近、わが身可愛さに派閥と仲間を裏切り禁を破ってマスコミにペラペラうたっていた某代議士がいたがクズですね。そいつに読ませてやりたい。 - 「昼下がり、行きつけのカフェにて」(結城真一郎)
この作者の作品は読んだことがなく、名前すら知らなかったが、今後注目したい。 - 「契約書の謎」(柚月裕子)
どんでん返しのどんでん返し。 - 「オンライン家族飲み会」(横関大)
切ない。 - 「美味しいラーメンの作り方」(七尾与史)
全くの想定外。 - 「焼きそば」(新川帆立)
34編中最高点。あくまで私の採点ですが。 - 「筋肉は裏切らない」(紺野天龍)
なかなかの力業。 - 「おとうちゃん」(万城目学)
さすが。
さて『わたしの名店 おいしい一皿に会いにいく』(ポプラ文庫)も手元にある。これは正月明けぐらいに読むこととしようか。
それにしても『シャーロック・ホームズの凱旋』(中央公論新社)の発刊が待ち遠しい。