4月2日
酒をしこたま飲んだ帰り、バスを降りてふと見上げたら木蓮の花が咲いていた。
もう、美しい時機を失してはいるが、漆黒の闇にぼうっと浮かび上がる白い花にはっとした。
この花を見ると由美ちゃんを想う。
由美ちゃんというのは庄司薫さんの小説『白鳥の歌なんか聞こえない』にでてくる少女だ。
少女といっても私の記憶では、たしか高校生ぐらいだった気がする。
私が高校生の頃、理想としていた女性像(こんな彼女が欲しい)でもあった。
この由美ちゃんが主人公・薰のところに3月中旬頃ひょこひょこやってきて、
「斉藤さんちのモクレンが咲いたの」なんて、まあなんていうか、
そりゃもう実にしあわせそうが顔をして言ったりする。
小説の冒頭のシーンである。ああ、やっぱりかわいいなぁ。