佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

米原万里の「愛の法則」

五年くらい前に、ニューヨークのハーレムでこんな事件が起きました。黒人の浮浪者の前に、やはりいきなり神様が現れて、三つの願いをかなえてやると言われたんです。彼は迷うことなく、次のように叫んだそうです。「白くなりたい」「女たちの話題の的になりたい」「いつも女の股ぐらにいたい」。すると、たちまち男の姿は消え去り、路上にはタンポンが一個転がっていたというんです。

                                              (本書P123 理解と誤解のあいだより)

 

 

 米原万里の「愛の法則」』(集英社新書)を読みました。

 裏表紙の紹介文を引きます。


 稀有の語り手でもあった米原万里、最初で最後の爆笑講演集。世の中に男と女は半々。相手はたくさんいるはずなのに、なぜ「この人」でなくてはダメなのか―〈愛の法則〉では、生物学、遺伝学をふまえ、「女が本流、男はサンプル」という衝撃の学説!?を縦横無尽に分析・考察する。また〈国際化とグローバリゼーション〉では、この二つの言葉はけっして同義語ではなく、後者は強国の基準を押しつける、むしろ対義語である実態を鋭く指摘する。
 四つの講演は、「人はコミュニケーションを求めてやまない生き物である」という信念に貫かれている。


 

 米原万里さんの講演録四本が本にまとめられたものです。米原流男女関係論・国際関係論といったところ。この方の視点は正鵠を射ている。まずは女は男を次の3つのカテゴリー分類するという話。「A ぜひ寝てみたい男」「B まあ、寝てもいいかなってタイプ」「C 絶対寝たくないタイプ」で、多くの女性の中でCが90%を占めているという。また、国際化について彼女は「日本人の言う国際化は国際的な基準に自分たちが合わせていくという意味だが、アメリカ人の言う国際化(グローバリゼーション)は自分たちの基準を世界各国に強要していくという意味であって、全く正反対の意味を持っている」と喝破する。まことに慧眼と言うべきである。お得意の下ネタも交えて楽しくも目から鱗の講演である。本ではなく会場で聴きたかった。