佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『月魚』(三浦しをん・著/角川文庫)

店にあるときの古本は静かに眠る。これらの本を書いた人間たちは、すでにほどんど全員死者の列に連なっている。ここに残されているのは、この世にはもう存在していない者たちの、ひっそりとした囁き声だ。かつて生があったときの、喜びや悲しみや思考や悩みの一部だ。真志喜はそれらの本の発する声を、じっと聞いているのが好きだった。書物の命は長い。何人もの間を渡り大切にされてきた本は、老いることを知らずに、『無窮堂』でのんびりと次の持ち主が現れるのを待っている。

                            (本書P36より)

 

『月魚』(三浦しをん・著/角川文庫)を読みました。

 

裏表紙の紹介文を引きます。


 

古書店『無窮堂』の若き当主、真志喜とその友人で同じ業界に身を置く瀬名垣。二人は幼い頃から、密かな罪の意識をずっと共有してきた―。瀬名垣の父親は「せどり屋」とよばれる古書界の嫌われ者だったが、その才能を見抜いた真志喜の祖父に目をかけられたことで、幼い二人は兄弟のように育ったのだ。しかし、ある夏の午後起きた事件によって、二人の関係は大きく変っていき…。透明な硝子の文体に包まれた濃密な感情。月光の中で一瞬魅せる、魚の跳躍のようなきらめきを映し出した物語。


 

月魚 (角川文庫)

月魚 (角川文庫)

 

 

 

最近、古本屋を舞台とした小説にはまっている。この『月魚』もそうです。本の魔力にからめ捕られてしまった者の悲話として、そして本にまつわる素敵な物語として素晴らしい小説です。しかし、私にとっては少々残念なことがあります。それは話の主人公たる二人にホモセクシャルのにおいをぷんぷんまとわせているところです。三浦さんにはそうすべき何らかの意図があるのでしょうが、性的にストレートな男にとっては違和感がありすぎて物語に没頭できないのです。いちいちそのような場面でひっかかってしまいます。女性から見て美しいものなのでしょうか? ホモセクシャルは、たとえそれをBLと呼ぼうが何だろうが、おおかたの男から見ればおぞましいとさえ感じてしまうものです。主人公「真志喜」を「真奈美」と書き換えていただきたい。三浦さん、お願いです。

 

(2012/6/7 読了)