佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

ツナグ

「世の中が不公平なんて当たり前だよ。みんな平等に不公平。フェアなんて誰にとっても存在しない」

                             (本書P47より)

 

『ツナグ』(辻村深月・著/新潮文庫)を読みました。

 

 

 

使者(ツナグ)という役割というか能力を持つ主人公という設定になかなか素直に入り込めなかった。あり得ないだろうという心理障壁です。しかしその嫌いにもかかわらず感動しました。よい小説でした。相変わらず辻村氏は人の心のひだを描くのが上手い。ひがみ、嫉妬、エゴイスティックな心など、人はしばしばそうありたくない自分になってしまう。辻村氏は人のそうした姿を見つめつつも、それでも人は捨てたものじゃないと言ってくれる。読み終えた後に温かいものが残る、そんな物語を紡いでくれる作家です。「長男の心得」と「待ち人の心得」に涙。