佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

2013年の読書メーター その1

2013年の読書メーター
読んだ本の数:153冊
読んだページ数:48065ページ
ナイス数:33104ナイス

 

結構、たくさん読みました。今、積読本の山に呆然としつつ本棚を整理中。今年も読むぞっ! 目標200冊。

暴走家族は回り続ける (講談社文庫)暴走家族は回り続ける (講談社文庫)感想
愛を、そして絆を失ってしまった家族の道行きと再生の物語。こうまとめてしまえば愛と感動の物語かと思われるかもしれないが、それは大いなる勘違いです。いささか下品です。いや、そうとう下品です。いやいや、極めて下品です。読んだ感想など語るに値しません。一つだけ言えるのは「勢いだけは、パねぇ」ということ。でもけっして嫌いじゃないですよ。そうでなければ悪夢シリーズを通読しません。そうです。私は木下半太氏のファンです。
読了日:1月2日 著者:木下半太
ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)感想
よもやこの少年の名は守田・おっぱいに目のない男・一郎君ではあるまいな?、と思ったが違っていた。少年の名はアオヤマ君であった。少年は自立心と向上心と克己心に溢れている。少年は世界の果てやら相対性理論やら生命の起源やらについて考えるのに忙しい。少年は怒らない。怒りそうになるとおっぱいのことを考えるのだ。おっぱいケーキを食べるのも有効な手段のひとつだ。心を平和に保つ術を心得ている。いつか少年はペンギン・ハイウェイを辿って世界の果てに行き着くことができるだろう。それはお姉さんにつながる道だ。泣くな少年。ぐんない。
読了日:1月6日 著者:森見登美彦
和菓子のアン (光文社文庫)和菓子のアン (光文社文庫)感想
デパ地下お仕事系日常のミステリですね。幸せになりたいと心から願うあなた、この小説を読みなさい。然る後に和菓子屋に行くべし。あなたが知らなかった世界が其処にあります。その世界を知ることなく生きた?年間の人生はいったい何だったんだーと地団駄を踏むことでしょう。今日は仕事帰りにデパ地下の源吉兆庵に行き「紅花りんご」と「粋甘粛」を買いましたよ。その後、酒売り場でお姉さんに「加茂鶴の新酒が入っていますよ」と声をかけられたが素通りしてしまった。我ながらびっくりしている。信じられん・・・・。
読了日:1月8日 著者:坂木司
とんび (角川文庫)とんび (角川文庫)感想
「幸せすぎると、悲しゅうなるんよ。なんでじゃろうなぁ」という気持、わかります。だって、その幸せはほんとうに大切なものだから。失いたくないものだから。この小説は反則です。涙を堪えようにも、そうできないから。読み始めたら最後、目頭はぐじゅぐじゅです。ヤスさん、あなたに教えてもらいました。たとえ「理」のスジは通っていても、「情」のスジが通っていなければいけないのだと。そうでなければ、悲しゅうなるほど幸せを希求する気持に申し訳が立たないのだと。ヤスさん、私は泣きましたよ。笑いたいから泣きましたよ。
読了日:1月12日 著者:重松清
幸福ロケット(ポプラ文庫)幸福ロケット(ポプラ文庫)感想
素敵なラブ・ストーリーでした。本作にも山本幸久氏の登場人物に注ぐ温かいまなざしは健在です。山本氏の小説に悪人はいません。そりゃあ、ちょっとイヤな奴、いささかヘンな奴はいます。天国の物語じゃないのですから。でもそんな人物も本当はイイやつなんです。ちょっとした怒りやジェラシーから相手を傷つけるような行動をとったり、言葉を発してしまう。でもそれはその時のいきさつからそうなったわけで、場面が違えばまた別の顔が見えてくるはず。山本氏の小説を読んでいつも思うのは「世の中、捨てたもんじゃない」だ。私はそう信じている。
読了日:1月14日 著者:山本幸久
乙嫁語り 5巻 (ビームコミックス)乙嫁語り 5巻 (ビームコミックス)感想
初版初刷発刊日は10日後の1月25日。amazonから昨日届いたばかり。なのに読書メーター登録者数938。みんな首を長くして待っていたのだな。ライラとレイリ、双子の結婚式。スミスさんの旅はつづく。カルルクとアミルの仲睦ましい様子が微笑ましい。相変わらず森薫さんの画は微に入り細にわたる。
読了日:1月16日 著者:森薫
エデン (新潮文庫)エデン (新潮文庫)感想
サクリファイス。ツールにおいてそれはチームのエースを勝たせるために自己を犠牲にすること。しかしそれは与え続ける者と奪い続ける者といった一方的な関係ではない。なぜならエースはチームメイトの犠牲に見合うだけの結果を残す責任を負うからだ。チームの思いを一身に受け止め、チームの栄光を勝ち取る責任を引き受けるのだ。ある選手はそれを”呪い”と表現した。日本人としてツール・ド・フランスの舞台に立つチカにも”呪い”はかかっている。それも超弩級の”呪い”が・・・・・。チカがその”呪い”にどう応えるか、続きが読みたい。
読了日:1月17日 著者:近藤史恵
じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (1) (アクション・コミックス)じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (1) (アクション・コミックス)感想
ヨシ江さんの事を好きすぎて身の置き所のないテツ。チエちゃんが好きで意地悪をいうマサル。テツに何度だまされても、今度こそはひょっとしたらと期待してしまうおジイはん。どうしようもない息子とあきらめながらも正面からテツに向き合うおバアはん。テツの屈折した心情を子供の頃から知っている花井先生。むちゃくちゃなテツを警察官になった今もつれだというミツル。いつもテツにひどい目に遭わされるのに、テツの側に寄ってくる元・遊興倶楽部の社長、カラメル兄弟。ヨシ江さんもチエちゃんもテツの屈折した心理の理解者だ。この世界は温かい。
読了日:1月19日 著者:はるき悦巳
ツナグ (新潮文庫)ツナグ (新潮文庫)感想
使者(ツナグ)という役割というか能力を持つ主人公という設定になかなか素直に入り込めなかった。あり得ないだろうという心理障壁です。しかしその嫌いにもかかわらず感動しました。よい小説でした。相変わらず辻村氏は人の心のひだを描くのが上手い。ひがみ、嫉妬、エゴイスティックな心など、人はしばしばそうありたくない自分になってしまう。辻村氏は人のそうした姿を見つめつつも、それでも人は捨てたものじゃないと言ってくれる。読み終えた後に温かいものが残る、そんな物語を紡いでくれる作家です。「長男の心得」と「待ち人の心得」に涙。
読了日:1月20日 著者:辻村深月
じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (2) (アクション・コミックス)じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (2) (アクション・コミックス)感想
年明けに読んだ『ペンギン・ハイウェイ』(森見登美彦:著)のアオヤマ少年は日本で一番ノートを書く少年であった。今回、チエちゃんは「母の帰還の巻」で日本一寝る時間の少ない少女となった。あぁ、じゃりチエの第2巻はアカン。何回読んでも泣けてくる。「同居予行演習の巻」で京阪電車の中で歌を歌い続けるチエちゃん、コンクールで金賞に選ばれた表彰式で「ウチのお父はん」と題した作文を読むチエちゃんに涙ボロボロ。私はコミックでボロボロに泣いてしまう日本一アホな老年一歩前の男だ。泣くな少年、泣くなチエちゃん。ぐんない。
読了日:1月20日 著者:はるき悦巳
山田太郎十番勝負 (角川文庫)山田太郎十番勝負 (角川文庫)感想
カフカをしのぐ不条理。(笑)相撲取り、権兵衛タヌキ、武者人形ロボット、サンタクロース、透明人間、ミイラ男、パンパン、星飛雄馬武蔵坊弁慶との真剣(?)勝負。くだらないがつまらなくはない。軽薄だが浅はかではない。あほらしいがイヤではない。愚にもつかないが読んでしまう。この本をお父さんの本棚から取り出して塾通いの電車の中で読んだ香な子ちゃん(山本幸久:著、幸福ロケットの主人公)がいとおしい。ちょっと、エッチなところはどう読んだのだろう? 幸せ系額のシワが取れる小説でした。くだらないけど・・・・・好きです。 
読了日:1月22日 著者:横田順彌
洟をたらした神 (文春文庫 (341‐1))洟をたらした神 (文春文庫 (341‐1))感想
「序」として詩人の串田孫一氏が文章を寄せていらっしゃる。吉野せい氏の文章を「一度ですぱっと木を割ったような、狂いのない切れ味」と評された。しかし、私にこの文章は合わない。最初に収められた短編『春』の書き出しはこれだ。「春ときくだけで、すぐ明るい軽いうす桃色を連想するのは、閉ざされた長い冬の間のくすぶった灰色に飽き飽きして、のどにつまった重い空気をどっと吐き出してほっと目をひらく、すぐに飛び込んで欲しい反射の色です。」 これを読んだ瞬間、あぁ、これはダメだと直感した。社会主義思想のにおいも好みじゃない。
読了日:1月23日 著者:吉野せい
西城秀樹のおかげです (ハヤカワ文庫 JA)西城秀樹のおかげです (ハヤカワ文庫 JA)感想
妄想とエロスとギャグがハイブリッドに同居するお笑い系耽美小説であった。いかん、新幹線車中で読み耽ってしまったぞ。あぁ、「耽る」とはなんとエロティックな言葉であろう。これはSF小説にカテゴライズしてよいのであろうな。そして心做しか官能小説でもある。いや、可成り官能小説であるぞ。ファンタジーでもあり、ロマンスといえなくもない。それとも風刺ととらえると一見軽薄と思えたものもぐっと深みを増してくるではないか。おそろしい小説だ。まあ、これほど「病んでいる」のだからここはSFとカテゴライズしておきたい。
読了日:1月25日 著者:森奈津子
紫紺のつばめ―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)紫紺のつばめ―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)感想
髪結い伊三次シリーズ第一弾『幻の声』を読んでから久しい。すぐにも続きを読みたかったがそこをグッと我慢して他の著者の本を読んでいた。読みたいのを堪えに堪えたうえで一気に読む。これがたまりません。そうした変態的楽しみ方もまたシリーズものならではのものです。さて、第二弾の本書です。伊三次とお文の別れと再出発。いなみの仇討ち。おみつが拐かされたりと波瀾の展開にはらはらさせられどおしでした。でも読み終えた後、ほっこり胸が温かい。これぞ宇江佐真理さんです。期待を裏切りません。さすがです。私、いなみに心惹かれています。
読了日:1月28日 著者:宇江佐真理
探偵ザンティピーの休暇 (幻冬舎文庫)探偵ザンティピーの休暇 (幻冬舎文庫)感想
探偵ものといっても小路幸也氏らしい小説でした。全体をとおして家族とか地縁のあたたかい雰囲気が感じられる小説。ただ、なにかしら物足りないのは謎の真相が思ったほどではないからか? あるいは登場人物に悪人がいないからか? でもそれが小路テイスト。小説世界に一緒にいたいと思うのは私だけではないだろう。シリーズ第二弾に期待。続きを読みます。
読了日:1月30日 著者:小路幸也
じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (3) (アクション・コミックス)じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (3) (アクション・コミックス)感想
今巻ではマサルの出番が増えてきた。チエちゃんへの堪った悪口をノートに10冊も書くマサル。悪口を言えないストレスでノイローゼになるマサルがイイ。私はやっぱりマサルのファンです。そして、ついに出た~~レイモンド飛田の名言「赤貧チルドレン」。ヒラメちゃんも登場。ヒラメちゃんの塩センベの食べ方、最高! ヨシ江はんの「お父さん頑張って~~~~」の一言でカチンコチンになるテツ。今でも惚れてるんやなぁ。テツ殿、そしてマサル殿、フクザツなご心情、お察し申し上げます。
読了日:2月2日 著者:はるき悦巳
夜の光 (新潮文庫)夜の光 (新潮文庫)感想
ゲージ君、君はアケルダマ卿の生まれ変わりかね?(何のことか分からない人は「英国パラソル奇譚シリーズ」を読むべし) <ゲージ>「そりゃないよ、ハニー」、<ジョー>「私は蜂蜜じゃないし、あなたの恋人でもない」――なんて面倒くせぇやりとりなんだ? でも、慣れるとちょっといいねと思えるから不思議だね。天文部の4人のスパイ、ブッチ(黄川田祐一)、ギィ(安田朱美)、ゲージ(青山孝志)、ジョー(中島翠)、君たちはすてきな仲間だ。こんな仲間に出会えるなら、私はもう一度高校生に戻りたいよ。たとえ苦しい受験勉強があってもね。
読了日:2月3日 著者:坂木司
さらば深川―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)さらば深川―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)感想
「因果堀」がめったやたらと良かった。女に惚れるということ、惚れられるということがこれほど切なく描かれた小説を私は知らない。私が増蔵の立場ならどうしただろうか? つれ合いを、子供を捨てる決心がつくだろうか? 増蔵はどれほど悩んだのだろう、どれほど迷ったのだろう。おそらく、どちらにも決められなかったに違いない。心が定まらないまま、心が傾いたのは「弱い方に寄り添ってやりたい」という気持ちだったのだなぁ。増蔵は自分を地獄に突き落とす覚悟で、自分が餓鬼畜生にも劣るものになり果てる覚悟を決めて動いたに違いない。
読了日:2月8日 著者:宇江佐真理
秘剣こいわらい (講談社文庫)秘剣こいわらい (講談社文庫)感想
主人公が女子大生なのに京都を舞台にした大チャンバラ活劇であるという誠に奇妙な小説であった。しかしこれが滅多矢鱈におもしろい。読者としては小難しいことは考えずただただ楽しめばよい。読後感痛快、そんな小説だ。『鴨川ホルモー』(万城目学/著)と双璧をなす現代京都活劇。こんな小説が日の目を見ず埋もれてしまう危険性があったとは、信じられない思いである。救世主となったマガジンハウスさんありがとう。そして文庫化してくださった講談社さんありがとう。
読了日:2月10日 著者:松宮宏
じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (4) (アクション・コミックス)じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (4) (アクション・コミックス)感想
チエちゃんがマサルの複雑な気持ちに薄々気づく。「オェー気持ちわる~」なんていっているけれど、大人になったらどんな反応になるのだろう。チエちゃんはまだまだ子供だ。でたぁ~花井拳骨「横縞教授フルチン事件」伝説。天若不愛酒,酒星不在天。地若不愛酒,地應無酒泉。天地既愛酒,愛酒不愧天。私も李白に近づくべく酒を飲み続けます。極めつけはミツルの結婚披露宴でのテツのスピーチ。飾りっ気なしの真心に目頭が熱くなった。
読了日:2月11日 著者:はるき悦巳
じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (5) (アクション・コミックス)じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (5) (アクション・コミックス)感想
今巻は「大阪カブの会」にからむ話。ウルウル度は少ないものの、ギャグ満載。地獄組組長・レイモンド飛田が良い味を出している。
読了日:2月11日 著者:はるき悦巳
余寒の雪 (文春文庫)余寒の雪 (文春文庫)感想
七編の短編集。宇江佐さんらしい機微にあふれている。宇江佐さんの小説にはやはりハッピーエンドが似合う。その意味で「梅匂う」と「余寒の雪」が良い。素敵なラブストーリーでした。逆に「出奔」と「蝦夷松前藩異聞」は好みではない。宇江佐さんとすれば実験的な作品なのかもしれない。
読了日:2月13日 著者:宇江佐真理
シングルベル (朝日文庫)シングルベル (朝日文庫)感想
一番の問題は進藤陽一が思い寄する人が誰かということだろう。3回読み返したがやはり確信するまでに至らなかった。外資系キャリアウーマン円山すみれ、バンドをやっているメアリー・スチュアート・マターソンに似の(?)大船彩子、ハーフの元モデルで現マネージャーの双葉カトリーヌ、いったい誰なんだ? 私の勘であるがカトリーヌは外していいように思う。残るはすみれか彩子。素直に読めば彩子というのが順当なところだろう。しかし私とすればここはすみれであって欲しい。なにせ花言葉が”謙遜””誠実”極めつけが”小さな幸せ”なのだから。
読了日:2月16日 著者:山本幸久
じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (6) (アクション・コミックス)じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (6) (アクション・コミックス)感想
前巻に引き続きヒラメちゃんの存在感が増してきた。相撲だけでなく絵画にも才能があったとは・・・・。極めつけは歌唱力。ひょうたん池のフナが腹を見せて浮かんでくるほどとは、ロシアに落ちた隕石に匹敵するほどセンセーショナルではないか。(笑) 私が今巻でいちばん興味を覚えるのはアントニオJr.の春ノイローゼ。彼と小鉄の会話には何度読んでもニヤリとさせられる。真剣に語れば語るほど諧謔的になる会話の妙。私をして、はるき悦巳氏を天才と謂わしめる所以である。
読了日:2月17日 著者:はるき悦巳
さんだらぼっち―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)さんだらぼっち―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)感想
己の欲望のために人を殺めてもと思う者が居る。一方、自分の大切な人のためなら己を犠牲にすることも厭わない者が居る。惚れた人と一緒にいたいから、己のこれまでの人生をうっちゃってしまう者も居る。「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」 世の中、捨てたものじゃないと思いたい。
読了日:2月18日 著者:宇江佐真理
じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (7) (アクション・コミックス)じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (7) (アクション・コミックス)感想
今巻でチエちゃんは”遺伝”について悩む。運動会での父兄による地区対抗リレーに絡むいきさつの中で、ヨシ江さんとテツのなれそめが垣間見えた。ヨシ江さんの勘違いがかわいい。とりあえずチエちゃんはヨシ江さんの良いところを一杯引き継いでいることが判った。よかった、よかった。チエちゃんも大人になったらきっと美人になる。マサルの気持ちはいよいよフクザツだ。
読了日:2月23日 著者:はるき悦巳
じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (8) (アクション・コミックス)じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (8) (アクション・コミックス)感想
今巻はヒラメちゃんの才能とテツの才能(?)のお話。ヒラメちゃんは画の才能もさることながら、人への細やかな気遣いができる良い子だ。一方、テツの唯一の取り柄はケンカに強いところ。それは本人も十分自覚しているところだ。ボクシング・ジムを始めたレイモンド飛田はテツのケンカの才能を活かそうと企む。しかし、テツにはそれを活かして金持ちになろうなどという小賢しさがないのだ。大物である。人はそれを阿呆と呼ぶのかもしれないが。話を市川雷蔵の手紙のエピソードに変えよう。テツとヨシ江はんの恋がこれほどピュアで美しかったとは。
読了日:2月26日 著者:はるき悦巳
じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (9) (アクション・コミックス)じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (9) (アクション・コミックス)感想
雷蔵からの手紙を焼いてしまうヨシ江はん。このシーンが切ない。『じゃりン子チエ』を思うとき、私はいつもこのシーンをある種の哀しみと温かみをもって思い起こすのだ。人を好きになるという気持ちの美しさ、温かさ、切なさをピュアに描ききった「雷蔵からの手紙」のエピソードを私は決して忘れることができない。
読了日:2月26日 著者:はるき悦巳
茜色の空 哲人政治家・大平正芳の生涯 (文春文庫)茜色の空 哲人政治家・大平正芳の生涯 (文春文庫)感想
どうやら私は大平正芳という人物を誤解していたようだ。彼がこれほどの知性と洞察力と政治哲学を持つ秀でた政治家だと知らなかったのだ。60年代、70年代の我が国政治の重要局面でこれほど影響力を持った人物であったとは驚きである。私は何も知らず、何も見えていなかった。恥ずかしい限りだ。――権力はそれが奉仕する目的に必要な限りその存在が許される―― 大平氏が書きとめたこの言葉は権力者たる者の自戒をこめたものだろうが、同時に政治家として非難をおそれず権力を行使し良い結果に結びつける責任があるという覚悟でもあるのだろう。
読了日:2月26日 著者:辻井喬
ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~ (メディアワークス文庫)ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~ (メディアワークス文庫)感想
今巻は江戸川乱歩にまつわるエピソード。ミステリとして趣向が凝らしてあり楽しめた。既刊3巻を読んで、栞子さんと栞子さんの母親の関係がどのように描かれていくのだろうと思っていたが、どうやら方向性が見えてきた。『美味しんぼ』の山岡士郎海原雄山の関係にも似た関係。つまり親を憎む一方、親の傑出した力を目の当たりにした時、親を無視することが出来ないありようということか。ビブロフィリアとしてライバル心を押さえることが出来ず、しかし超えることの出来ない圧倒的な存在として惹かれてしまう栞子さんの心境は複雑だ。
読了日:2月28日 著者:三上延
先輩と私 (徳間文庫)先輩と私 (徳間文庫)感想
森奈津子氏はただものではない。理由は二つ。「マイノリティーのどこが悪い」という開き直りとも取れるあっけからんとした性癖カミングアウト。もう一つは水際だった「羞恥」の表現である。私は男で、しかも性的にはストレートな範疇に納まっていそうである。つまり森氏のいう”異性愛者の成人男性であるオヤジ”であるから、社会を単純化して分析した際には圧倒的強者に分類され、弱者である女性、なかんずくマイノリティーである同性愛者を抑圧する存在なのだ。そんな私でもこの小説に思わず笑わされ、同時に悶々とした気分にさせられるのである。
読了日:3月2日 著者:森奈津子
神様のカルテ2 (小学館文庫)神様のカルテ2 (小学館文庫)感想
この温かい読後感、さすがです。もちろんそのような小説を浅薄だとか深みがないなどという向きもあるだろう。世の中は不公平と不条理と矛盾と絶望と哀しみに満ちており、「夢見がちな乙女じゃあるまいし、厳しい現実をきれい事の甘ったるい話にすり替えるんじゃねぇ」という辛口意見が聞こえてきそうである。だが良いではないか。どんなに絶望的な状況にあっても人には希望が必要だし、ささやかな幸せが必要だ。そうでなければ生きている意味がない。小説はしばしば「そうあって欲しい夢」を見させてくれる。だから私は小説を好んで読むのだ。
読了日:3月3日 著者:夏川草介
横道世之介 (文春文庫)横道世之介 (文春文庫)感想
かつて私も親元を離れ一人で学生生活を送ったことがある。本作の舞台は東京、私が住んだ街は神戸。時代も本作の’80年代バブル期に対し、私の場合は’70年代の後半であったので、少しく様相は違うだろう。しかし、生活環境が一変するなかで期待と不安がないまぜになった心持ちというものはおそらく同じに違いない。読んでいて、なにか楽しくもあり、懐かしくもあり、かなしくもあるというなんとも不思議な心持ちであった。そして後に残ったのは、なにやらほんわか温かいもの。それは実態がはっきりせず、曖昧模糊としたものではあるけれど。
読了日:3月9日 著者:吉田修一
じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (10) (アクション・コミックス)じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (10) (アクション・コミックス)感想
チエちゃんの先生・花井渉の恋愛が描かれた巻。第十二話「恋する二人の巻き」で花井親子がテツとヨシ江さんのことについて話す場面がある。花井拳骨氏の「ギクシャクしとるやろ。まあテツは今でも恋愛しとるんやな」という言葉につきる。
読了日:3月9日 著者:はるき悦巳
ドラッカーの教えどおり、経営してきましたドラッカーの教えどおり、経営してきました感想
酒巻社長がサイン入りで送って下さいました。未だ読み込みが浅いためもう一度読み直しながらよくよく考えてみる必要がありそうですが、とりあえず以下のことを心に思い定めたいと考えます。「見当違いでない方向に向かって、達成すべき目的を定め、目的達成のために成すべきことを道理にかなった形で考え実行する。実行にあたってはぶれないこと、人事が肝であること、コミュニケーションが大切であることに心すべし」と。
読了日:3月10日 著者:酒巻久
よつばと! 12 (電撃コミックス)よつばと! 12 (電撃コミックス)感想
前巻11を12月に読んだばかりで、3ヶ月足らずのうちに新刊が発売になるとは思っていなかった。あやうく見逃すところであった。これまでの巻にまして何気ない日常を描いているだけによつばのかわいさがじんわりと染み入ってくる。体についたペンキがずぅっととれないままになるかもしれないと真剣に考えているよつばがかわいい。もう一度、こんな小さな子供の父親やりたいぞっ!!(笑) 
読了日:3月14日 著者:あずまきよひこ
年刊SF傑作選〈第2〉 (1967年) (創元推理文庫)年刊SF傑作選〈第2〉 (1967年) (創元推理文庫)感想
たんぽぽ娘」を読みたくて古書を探し求めようやく手に入れました。1975/8/8第12版です。「たんぽぽ娘」は素敵な話でした。一目で恋に落ちるということと、変わることなく想い続けるということ。人の心はどちらのかたちも取りうるのだということに改めて思いいたり、だからこそ相手を大切に思う心の貴さを痛切に感じました。「おとといはウサギを見て、きのうは鹿を見て、きょうはあなた」――この言葉をしばらくは忘れられそうにありません。 河出書房新社たんぽぽ娘奇想コレクション)』(5月発売予定)を予約注文しました。
読了日:3月24日 著者:
人間椅子  江戸川乱歩ベストセレクション(1) (角川ホラー文庫)人間椅子 江戸川乱歩ベストセレクション(1) (角川ホラー文庫)感想
一度見聞きしただけで忘れられない物語がある。私にとってそれは昔、オーソン・ウェルズ劇場で見た『猿の手』という物語と本書のタイトルにもなっている江戸川乱歩氏の小説『人間椅子』である。最近『ビブリア古書堂の事件手帳4』(三上延・著)を読んで、久しぶりに江戸川乱歩を読みたくなった。子供の頃に読んだ本は手元にないので本書を買い直した。あらすじは頭に入っていたが改めてわくわくどきどきしながら読んだ。あやしいフェティシズムとエロティシズム。そして危殆。罪の意識を感じながらこの物語を読んだ子供の頃を懐かしく思い出した。
読了日:3月27日 著者:江戸川乱歩
黒く塗れ―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)黒く塗れ―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)感想
物語には二とおりある。こうあって欲しいという結末の話とそうでない話。宇江佐さんは世の中そうあって欲しいと思っても、そうはならないことがあるということを知っている。物語を書きながら、何とか救ってやりたいと泣きながら、なすすべもなく運命に押し流されてしまう男と女を描いたのだろう。「畏れ入谷の」はそんな話だ。いっぽう、読み手のこうあって欲しいという気持ちに応えてくれた話もあった。「慈雨」である。これも滅法良かった。宇江佐さんなら「夢おぼろ」の美雨と監物にもとびきりの結末を用意してくれるに違いない。
読了日:3月28日 著者:宇江佐真理
両性具有迷宮 (双葉文庫)両性具有迷宮 (双葉文庫)感想
な、なんだこれはっ! お笑い百合SM小説が身上の、異端にして耽美主義のレズビアン作家(ひょっとしてバイセクシャル?)の森奈津子を主人公としたお笑い百合SF小説ではないかっ! おふざけもたいがいにしなさい。西澤保彦はお初です。調べてみると『七回死んだ男』でSF設定で本格推理作品が成立することを示されたお方とか。そのようなやんごとなきお方が、SF設定でおちゃらけ百合推理小説をお書きになるとは・・・。しかも実在作家を主人公とするというエポックメーキングな作品。チャレンジャーでいらっしゃる。それにしても私は・・?
読了日:3月31日 著者:西澤保彦
じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (11) (アクション・コミックス)じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (11) (アクション・コミックス)感想
今作では花井渉先生の婚約者がラグビーのコーチで大阪府警のチームを指導しているという設定。チエちゃんを含む西荻地区の面々の混成チームが大阪府警のチームと練習試合をする。ラグビーの試合をいいことに、警察官をボコボコにいてまう痛快感で読ませる。そんな中に、警察幹部(部長)の中年の哀愁が漂う純愛話も挿入されている。その実らぬ恋のお相手は西荻小町ことヨシ江さんとは。市井に暮らす人の純な心の滑稽さと哀しみ、このテイストこそじゃりチエの真骨頂。あぁ、切ない話や・・・。
読了日:3月31日 著者:はるき悦巳
君を乗せる舟―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)君を乗せる舟―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)感想
美雨と監物の後日譚がありましたね。読者の期待に応えてくれる宇江佐さんの気持ちがうれしい。祝言そして懐妊。ここまで書けば、仲むつまじい二人を描いた小篇も期待したいところ。続編に期待。本作においては何よりも元服した龍之進に注目。良い若者に育ちました。初恋の女性・あぐりが雪のような花嫁衣装で舟に乗り浅草に向かう。それを見送る龍之進の気持ちがほろにがく胸に迫る。
読了日:4月1日 著者:宇江佐真理
旅の絵本 (1) 中部ヨーロッパ編 (安野光雅の絵本)旅の絵本 (1) 中部ヨーロッパ編 (安野光雅の絵本)感想
道はどこまでも続く。場面1は北欧の海。安野氏は海と言うより”陸の外れ”という。安野氏らしい淡い色彩の海、そして丘。はじめは小高い丘から見下ろすような構図だが場面2、場面3と進むうちに安野氏の視点は鳥瞰するように変わっていく。道は続く。欧羅巴の山、丘、樹、家、そしてそこに暮らす人々を穏やかな視線で描いていく。道はさらに続く。どこまでも続く。私が安野氏をはじめて知ったのは十数年前のTV番組でのこと。NHK教育で風景画を描いていらっしゃった。番組中、訥々と話をしながら水彩画を描くお姿がとても素敵だった。
読了日:4月3日 著者:
雨を見たか―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)雨を見たか―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)感想
伊三次とお文の息子・伊与太の鷹揚さと友之進といなみの娘・茜の利かん気がたいそう面白くかわいくもある。友之進の息子・龍之進は見習い同心として奉行所に出仕しはじめた。シリーズが進むにつれて、伊三次のというより、伊三次を取り巻く周りの人の物語になってきている。特に本編では龍之進が大人になっていく課程が描かれている。こうなってくると私はすっかり宇江佐さんの作り出す世界に取り込まれてしまう。そして登場人物の動きに一喜一憂しながら、あぁ髪結い伊三次シリーズに出会えて良かったとしみじみ思うのである。
読了日:4月5日 著者:宇江佐真理
我、言挙げす―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)我、言挙げす―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)感想
龍之進の少年から青年に成長する過程で、様々な葛藤に立ち向かう心意気が好もしい。その意気や良し。しかし、宇江佐さんは最後に「言挙げ」という概念を持ってきた。言挙げとは「神をも畏れず、己の考えを言い立てること」。言葉には呪力がある。昨今、欧米的価値観からすれば自らの意志は積極的に表明するものだろうが、古来の日本的価値観は自己主張は慎み、神の意志に従って行動するというもの。特に、経験も思索も浅い若輩にあってはそのような心がけも必要だろう。それはおそらく、人の言動は個人を超えて公におよぶからなのだろう。
読了日:4月6日 著者:宇江佐真理