佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

妖怪探偵・百目 <1>朱塗の街

『妖怪探偵・百目 <1>朱塗の街』(上田早夕里・著/光文社文庫)を読みました。

 

まずは出版社の紹介文を引きます。


 

絶世の美女にして全身に百の眼を持つ妖怪・百目。彼女の探偵事務所は、妖怪と人間が共存する“真朱の街”にある。請け負う事件は、すべて妖怪がらみ。依頼人は、報酬を自分の寿命で払うのが決まりだ。助手の相良邦雄は、時々百目に寿命を吸われつつ、事件解決にこき使われる日々を送るのだが…。数多のもののけたちが跳梁跋扈する、妖怪ハードボイルド第一弾!


 

 

 

上田氏の著書『魚舟・獣舟』を読んだのは二〇一二年三月のことであった。その短編集第四話「真朱の街」を演繹する形での新シリーズが始まった。光文社の謳い文句は「妖怪ハードボイルド」なるもの。私が以前読んだものの中ではエリック・ガルシア氏の『さらば、愛しき鉤爪』を始めとする<鉤爪シリーズ>が「恐竜ハードボイルド」と呼ばれるものであったが、「恐竜ハードボイルド」が有るならば「妖怪ハードボイルド」があったとしても不思議はない。作中、上田氏は百目鬼の美女探偵・百目をして「人間には、ときとして真実よりも虚構のほうが必要なときがある」と語らせる。人間にとって真実にどのような意味があるのか、あるいは真実と虚構の境界線はどこにあるのかといったことを考えさせられた。第四話「炎風」に書かれた妖怪とヒューマノイドの恋が切ない。このシリーズ、読んでいきます。