佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

2015年7月の読書メーター

2015年7月の読書メーター
読んだ本の数:15冊
読んだページ数:5196ページ
ナイス数:2158ナイス

謎解きはディナーのあとで 3謎解きはディナーのあとで 3感想
このシリーズの良さは執事・景山の毒舌と令嬢刑事・麗子のノリツッコミのワンパターンだろう。この「水戸黄門」的(あるいは「男はつらいよ」的)ワンパターンが妙に心地よくニンマリさせられるのだ。目新しさなど要りません。いつまでもこのパターンを続けてほしいものです。
読了日:7月2日 著者:東川篤哉
蕎麦屋酒―ああ、「江戸前」の幸せ (光文社知恵の森文庫)蕎麦屋酒―ああ、「江戸前」の幸せ (光文社知恵の森文庫)感想
蕎麦屋は酒を飲むところである。店にはいるとまずは酒肴を楽しみながら酒を飲む。いわゆる蕎麦前である。酒肴は定番のもの。あれこれたくさん酒肴を出す店はよろしくない。いろいろな酒肴と酒を楽しみたければ居酒屋に行けばよい。少ない酒類の酒肴で酒を飲み、そのあとで蕎麦をたぐる。ゆっくりくつろぐが長居はしない。このシンプルなスタイルを貫くことが粋というものだ。著者のオススメの店「蕎麦屋ガイド」が参考になりうれしい。
読了日:7月4日 著者:古川修
最も遠い銀河〈1〉冬 (幻冬舎文庫)最も遠い銀河〈1〉冬 (幻冬舎文庫)感想
”光、生まれる朝。 光、支配する午後。 光、眠る夜。 生まれいでたる光輝かざれば、夜の闇に朽ちるのみ。 一瞬の光は永遠の輝きをもって遠い銀河に眠る。”  日陰に落ちた種子は、どんなに頑張っても光の中で花を咲かせることはできないのか。夜の闇に朽ちるしかない運命なのか。なんとか光の支配する午後を手にして欲しいと心から願うが、何故か先行きを憂えてしまう。この切なさこそ白川道のテイストなのだが・・・。あぁ・・・。
読了日:7月5日 著者:白川道
最も遠い銀河〈2〉春 (幻冬舎文庫)最も遠い銀河〈2〉春 (幻冬舎文庫)感想
因果応報、自縄自縛、自業自得、身から出たさび、自分で自分の首を絞める、自分で蒔いた種、いろんないい方があるけれど、そんな風に主人公・桐生を突き放す気にはなれない。日陰に落ちた種子が懸命に花を咲かせようとする姿に、なんとか光があたってほしいと願うのは私だけではないだろう。しかし、物語に漂う悲劇の予感。あぁ・・・切ない。第3巻「夏」を手にした。今夜は眠れない。
読了日:7月7日 著者:白川道
最も遠い銀河〈3〉夏 (幻冬舎文庫)最も遠い銀河〈3〉夏 (幻冬舎文庫)感想
睡眠時間を削り、電車での移動時間をフルに使って一気読み。頁をめくる手が止まらない。さて、次はいよいよ最終巻[4]。果たしてどんな結末が待っているのか。日陰に落ちた種子、桐生に光が支配する午後を生き抜き、夜の闇の中で輝くことができるのか。早く続きが読みたい。
読了日:7月8日 著者:白川道
最も遠い銀河〈4〉秋 (幻冬舎文庫)最も遠い銀河〈4〉秋 (幻冬舎文庫)感想
なんという結末か。いや、そうなる気はしていたのだ。でもなんとか主人公に幸せになって欲しくて、その予感を頭から追い払いながら読んでいた。小狡くうまく立ち回って幸せをつかむことを潔しとしない誇り高き男にはこの結末しかない。だからこそ切ない。白川流滅びの美学に酔いしれた1600ページ。
読了日:7月10日 著者:白川道
超高速! 参勤交代 (講談社文庫)超高速! 参勤交代 (講談社文庫)感想
先日『一路』(浅田次郎・著)を読んだのだが、またまた参勤交代ものである。『一路』は読み物として大変楽しく痛快であったが、この『超高速! 参勤交代』も痛快さにおいて決して負けてはいない。また、小説のテイストとして近いのは和田竜氏の『のぼうの城』でしょうか。どちらも映画になっているところも似ています。軽く読める痛快活劇ではありますが、主人公・内藤政醇の人としてのあり方には深いところがあり、決して侮れない小説です。
読了日:7月14日 著者:土橋章宏
想像ラジオ (河出文庫)想像ラジオ (河出文庫)感想
私はあちら側の人間ではない。私には想像ラジオが聞こえない。2011年3月11日の翌日、私は瀬戸内の穏やかな海をみながら島々を巡っていた。彼の地ではあれほどの惨状であったにもかかわらず・・・である。まったく無関心であったわけではない。あれほどの地異であれば、いかに縁もゆかりもないといっても心に重くのしかかる。私のとったのんびりとした行為は、私に意味もなく罪悪感をもたらした。そうではあっても、私はこちら側の人間なのだ。私には想像ラジオが聞こえない。
読了日:7月15日 著者:いとうせいこう
隠れ谷のカムイ―秘闘秘録 新三郎&魁 (新潮文庫)隠れ谷のカムイ―秘闘秘録 新三郎&魁 (新潮文庫)感想
第一弾『ヤマダチの砦』を読んだのが2011年11月12日のことであったので、もうかれこれ四年近く経ってしまったことになる。第一弾のあらすじも忘れかけていたので記憶を呼び起こしながら読み進めた。痛快な時代活劇。おもしろさは充分です。惜しむらくは、もっと登場人物の心情をさらに色濃く描き込んでいけば、もっと小説にのめり込めるのだがなぁ・・・。そのあたりは第三弾に期待したい。
読了日:7月16日 著者:中谷航太郎
錦繍 (新潮文庫)錦繍 (新潮文庫)感想
美しい往復書簡です。相手を思いやり、あふれ出ようとする自分の感情を節度を持って表現する。会話ではなく、手紙であるからこそ出来ることです。この小説を読むことで私は「恕」の心の崇高さを知った気がします。けっして平坦ではない人生を歩み、本当の苦しみも哀しみも味わった末に人を恕すことが出来るかどうか。不幸を他の何者かのせいにするのではなく、ただ受け入れることが出来るかどうか。そこに人としての品格が表れるのだろう。美しく気高い心と心が織りなした14通の書簡はやはり哀しい。哀しいが、そこには「未来」と「希望」がある。
読了日:7月17日 著者:宮本輝
幕末まらそん侍 (ハルキ文庫 と 6-1 時代小説文庫)幕末まらそん侍 (ハルキ文庫 と 6-1 時代小説文庫)感想
軽く読め痛快、のちホロリ。幕末のマラソン(遠足)に因む人情と矜持の物語を心から楽しんだ。五つの短編が繋がっているが、第二話「逢引き」が一番の好みかな。最近『一路』(浅田次郎・著)を読み中山道萌え状態にある。そこから参勤交代つながりで『超高速! 参勤交代』(土橋章宏・著)を読み、同じ著者の本書『幕末まらそん侍』に到達した。本書でまた中山道萌え状態である。こうしたかたちで次々と読書サーフィンを楽しむのは無上の喜びである。自由奔放な乱読に心浮き立っているこの頃。
読了日:7月17日 著者:土橋章宏
空色勾玉 (徳間文庫)空色勾玉 (徳間文庫)感想
古事記日本書紀を題材とした古代神話ファンタジー。崇徳院の恋歌が物語を暗示する。たとえ運命が二人を別っても想いが強ければいつか一緒になることができるということか。宿因に定められた運命、それが過酷であればあるほど想いは純化していく。その想いが一瞬でもかなえられるならば、自分はその瞬間のために生まれてきたのだと思える。そんな唯一無二な人に逢えることこそが恋だろう。想いが強ければ強いほど哀しい。しかしそれだけに美しい。
読了日:7月23日 著者:荻原規子
殺意の楔 (ハヤカワ・ミステリ文庫 13-9)殺意の楔 (ハヤカワ・ミステリ文庫 13-9)感想
小さな、しかし絶対に壊されたくない幸せ、それが謂われなき逆恨みによって危機に瀕している。そんな緊迫感が全編をつつむ。解決したとき、心から「よかったー」と思える脱力感。果たしてニトログリセリンは本物か偽物か、それがわかったときの何とも云えぬ気持ちは忘れられないほど。それほど物語にのめり込み、コットン・ホースに感情移入し、テディ・キャレラの身を心から按じていた。余談だが、順番を間違えてシリーズ第7弾『殺しの報酬』、第8弾『レディー・キラー』を読み飛ばしてしまった。これから第7弾に戻るが興ざめにならないかなぁ。
読了日:7月28日 著者:エド・マクベイン
殺しの報酬 (ハヤカワ・ミステリ文庫 13-7 87分暑シリーズ)殺しの報酬 (ハヤカワ・ミステリ文庫 13-7 87分暑シリーズ)感想
捜査過程が淡々と描かれ、犯罪の全貌が明らかになる過程が感情の起伏を抑えた筆致で書かれている。シリーズ第7弾ともなると、87分署に所属する刑事になじみがあり、相当な思い入れがあるだけにこうした描き方も好ましく、むしろ過剰な刺激は不要だ。シリーズ随一の一冊を選ぶとして、おそらく本巻『殺しの報酬』が選ばれることはないだろう。それでもファンにとっては87分署の世界にどっぷり浸る幸せを感じる一冊であった。
読了日:7月28日 著者:エド・マクベイン
レディ・キラー (ハヤカワ・ミステリ文庫 13-8)レディ・キラー (ハヤカワ・ミステリ文庫 13-8)感想
87分署シリーズ第8弾。タイムリミット・サスペンスのかたちをとっているものの、ハラハラ、ドキドキ感をあおるのではなく、むしろ警察活動を実際に近い形で地道に描こうとしている。87分署の刑事達は驚くほど明晰な頭脳を持つわけではなく、超人的な活動をするわけではない。そうしたことはシリーズを読み込んできた者にとって、むしろ好もしく、これこそが警察小説なのだと納得できる。シリーズを読むことを止められない。さて次は・・・。
読了日:7月31日 著者:エド・マクベイン

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