佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『鉄のライオン』(重松清:光文社文庫)

2023/01/25

『鉄のライオン』(重松清光文社文庫)を読んだ。重松清氏の小説は大好きであれこれ読んできた。本書が二十作品目となる。先月ふと立ち寄った古本屋で見つけ、そういえばこれはまだ読んでいないと買い置いていたものだ。

 出版社の紹介文を引く。

一九八一年三月。大学の合格発表のため遠く離れた西の田舎町から東京に来た「僕」。その長旅には同級生の裕子という相棒がいて、彼女は、東京暮らしの相棒にもなるはずだった──。ロング・バケイション、ふぞろいの林檎たち、ボートハウス、見栄講座……。「'80年代」と現代を行き来しつつ描く、一人の上京組大学生が経験する出会いと別れ。  『ブルーベリー』を改題・加筆

 

 

 ユースホステル、原宿竹下通り、ウォークマンⅡ、大滝詠一サントリーホワイト、真夜中のコインランドリー、ジョン・マッケンロージミー・コナーズウィンブルドンでの死闘、村上春樹、深夜の吉野家ブッシュマン、レゲエのおじさん・・・ 十二編の短編に出てくる場面がまさに呼び水になって、私の二十歳前後の思い出が蘇る。読んでいて、鼻の奥がツンとくるような切なさがこみ上げてきた。それはおそらく’70年代’から80年代に10代から20代の年齢だった私の中にあるノスタルジックな感傷がそう感じさせるのだろう。そんな感傷にひたる心地よさを己に赦しながら、それこそ私のもう少し上の年代が、未だに時代遅れの左翼風を吹かせて自己陶酔にひたっているのと似ているのかもしれないなぁと幾分恥じらいながら本を閉じた。