佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『赤と青のエスキース』(青山美智子:著/PHP研究所)

2023/09/07

『赤と青のエスキース』(青山美智子:著/PHP研究所)を読んだ。

 まずは出版社の紹介文を引く。

メルボルンの若手画家が描いた一枚の「絵画」。日本へ渡って三十数年、その絵画は「ふたり」の間に奇跡を紡いでいく。一枚の「絵画」をめぐる、五つの「愛」の物語。彼らの想いが繋がる時、驚くべき真実が現れる!仕掛けに満ちた傑作連作短篇。

 

 

 素敵な物語であった。青山美智子氏の小説を読んだのはこれが3作目。過去読んだ2作からして、青山作品のテイストはわかっているつもりだ。本作もその予想を裏切らない。読者を青山氏の物語世界(その世界はちょっとオシャレである種の優しさに満ちている)に引き込み、読者を惹き付け、読者が満足する結末を与えてくれる。なんといったら良いのだろう。閑静な住宅街にある日当たりの良いカフェで、軽いランチを食べた後、珈琲かあるいはキリッと冷えたクラフトビールなどを飲みながらページをめくる・・・そんな読み方がピッタリの小説だ。重くなく、心地よく、ちょっぴり切なくて、でも読後感はほんのり心が温まっている。そんな小説だ。青山氏はそんな世界を描きあげる職人だ。

 こうした小説は心がささくれ立っているときには読めない。「ケッ、なんだよ! この腐った世の中のどこにそんな話があるってんだ!!」みたく、物語を素直に読めない。私はどうだったか。けっこう楽しめたのである。ということは私は今、幸せなのだろう。

 

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