昼食後に、重大な決断が待っていた―――オフィスで読書するか、居間にのこって読書するか、についての。
これは、自分にどの程度のわがままを許すかという問題でもあった。
(本書P7・書き出しより)
『A型の女』(マイクル・Z・リューイン:著/ハヤカワ・ミステリ文庫)を読みました。
素晴らしいハードボイルド小説です。書き出しを読んだだけで直感しました。――自分にどの程度のわがままを許すか――この感覚を持った男に間違いがあろうはずはありません。
英題は”Ask the right question ”です。この英題の意味がミソです。読めば解ります。
裏表紙の紹介文を引きます。
お願い、わたしの生物学上の父を探して―。閑散としたオフィスに突然飛び込んできた少女にサムスンは面食らった。大富豪クリスタル家の一人娘が、血液型から自分は実の子ではないことが判明したと涙ながらに訴えるのだ。さっそくクリスタル家の系譜を探り始めたサムスンは、こころならずも名家の巨富をめぐる醜悪な争いに巻き込まれてゆく。暴力を憎む心優しき知性派探偵アルバート・サムスン、文庫初登場。改訳決定版。
心優しき知性派探偵アルバート・サムスン・シリーズ第一弾です。文庫版が発売されたのは1991年7月のこと。どうして今日まで読んでいなかったのかと悔やみます。
主人公アルバート・サムスンは女性に優しい紳士です。酒もタバコもやらず、銃を持たない探偵。過去の記録を丹念にあたり、聞き取り調査を積み重ねるという真面目な探偵ぶり。たまに不法侵入を試みるのはご愛嬌。マッチョであろうと無理をすることなく、あくまで知的に調査をすすめる姿に惚れ込みました。己の弱さや欲に負けることを潔しとせず、矜持を胸に気高く生きる姿にハードボイルドの原点を見る思いです。死体を発見しないミステリ。グロテスクであったり、暴力的な場面が登場しないところにセンスを感じます。
シリーズ第2弾『死の演出者』、第3弾『内なる敵』を買ったのはいうまでもありません。時間がかかろうと一作一作シリーズを通読しようと思います。
余談ですが、私のつれあいはB型の女。B型の女はけっこうマイペースです。A型の女はよく知りません。(笑)