佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

白磁の人

内外多忙にて寂しきことなく不自由の生活も修行と心得れば尊き恵。地上遠く離れて我が為に祈る者ありと思えば、励まされもし自重の念も起こる。夏に冬を慕い、冬に夏のみ思うは愚者なり。夏ありて夏を楽しみ、冬来たれば冬を味わう。この心を神は嘉(よみ)す。自然における草木の如く、正しき成長はそこにのみある。

                              (朝鮮民芸・陶芸研究家・浅川巧が妻・咲に宛てた手紙より)

 

 

 『白磁の人』(江宮隆之・著/河出文庫)を読みました。私が参加している読書の会(四金会)の今月の課題書です。小説としての味わいはともかく、映画にするには良いでしょう。おそらく会合では小説としての評価云々より、主人公・浅川巧の生き様や柳宗悦らが中心となって展開した民芸運動についての話になりそうな気がします。

 とにかく物語の主人公・浅川巧の生き様に圧倒された。私などは韓国や北朝鮮の言動に折々怒りを覚え、ついつい侮蔑の念を持つこともある。しかし、それはお隣の国の一部であり決して正確に実相を表してはいないことに心すべきだろう。浅川巧氏の祖父の言葉を改めてかみしめたい。「人間の仕事には貴賤などない。人種などというものにも上下はない。人の価値はな、どう生きたか、にあって地位や金銭ではどうにもならん。働いて、本を読んで、自然を大事にする。それだけのことだ」 至言と云うべきだろう。

 

「BOOK」データベースより紹介文を引きます。


朝鮮の、ことばを芸術をくらしをそして友を愛した人。かの国の白いやきもののように限りなく温かく、懐かしく、逢う人の心に沁みいった浅川巧の慈雨のごとき生涯。