佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『神様のカルテ 2』(夏川草介・著/小学館文庫)

 人間にはそれぞれの哲学というものがある。

 その哲学を櫂として、多事多難な世の大海をこぎ進んでいくのが人生である。

 人生がはなから不条理でできている以上、渾身の力を櫂に注いでも進めぬときがある。進めぬときに余人の船に体当たりをかまして突進するのは、禽獣の道である。我々は人間である以上、互いを慮って櫂を休めなければならないときもあるのである。

                                        (本書112Pより)

 

神様のカルテ 2』(夏川草介・著/小学館文庫)を読みました。

 

 

神様のカルテ2 (小学館文庫)

神様のカルテ2 (小学館文庫)

 

 

 

 

この温かい読後感、さすがです。もちろんそのような小説を浅薄だとか深みがないなどという向きもあるだろう。世の中は不公平と不条理と矛盾と絶望と哀しみに満ちており、「夢見がちな乙女じゃあるまいし、厳しい現実をきれい事の甘ったるい話にすり替えるんじゃねぇ」という辛口意見が聞こえてきそうだ。だが良いではないか。どんなに絶望的な状況にあっても人には希望が必要だし、ささやかな幸せが必要だ。そうでなければ生きている意味がない。小説はしばしば「そうあって欲しい夢」を見させてくれる。だから私は小説を好んで読むのだ。

 

最後に出版社の紹介文を引きます。


 

栗原一止は夏目漱石を敬愛し、信州の「24時間、365日対応」の本庄病院で働く内科医である。写真家である妻・ハルの献身的な支えもあり、多忙な日々を乗り切っている一止に、母校の医局からの誘いがかかる。今の病院で一人でも多くの患者と向き合うか、母校の大学病院で最先端の医療を学ぶか。一止が選択したのは、本庄病院での続投だった(『神様のカルテ』)。
新年度、内科病棟に一止の旧友・進藤辰也が東京の病院から新任の医師としてやってくる。かつて進藤は“医学部の良心"と呼ばれていた。しかし、彼の医師としての行動は周囲を困惑させるものだった。そして、さらに大きな試練が一止たちを待ち受けていた――。