佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『始まりの木』(夏川草介:著/小学館)

『始まりの木』(夏川草介:著/小学館)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

 

生きること、学ぶことの意味を問う、新世紀の“遠野物語”。“これからは、民俗学の出番です”。神様を探す二人の旅が始まる。

学問と旅をめぐる、奇蹟のファンタジー小説

 

始まりの木

始まりの木

 

 

  本書を小学館の編集者の方からの贈っていただいた。私が夏川草介氏の神様のカルテ・シリーズを読み、氏がたびたび訪れたであろう松本の居酒屋を飲み歩いていることを覚えて下さっていたのですね。ありがとうございます。

 第一話「寄り道」を読み始めて「おや?」と思った。以前に読んだことがあるのである。記憶の糸を手繰って思い出した。小学館の月刊誌『STORY BOX』で読んだことがあるのだ。2011年春のことだったので、記憶がなくなりかけていた。

 

jhon-wells.hatenablog.com

 

 

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 夏川氏の神様のカルテ・シリーズが好きで、まだまだ続きを読みたくもあるが、こうして新しいシリーズが刊行されることは嬉しいかぎり。いや、未だシリーズ化されるかどうかは判らないのでしょうか。シリーズは違えど、「命」「心」「人としての生き方」「矜持」といったことを連想させるテイストはやはり夏川氏のものだ。科学や人知を超えた不思議な話も盛り込まれた新境地。今後この物語がどう展開していくか楽しみです。シリーズ化されることを願います。

 余談になるが、最近卑しく見苦しいニュースが多いように感じる。生きていくうえでの信念や目的を持たず、只々自分の欲を充たしたいがために行動しているような輩が多いのではないか。現下のコロナ禍でいえば、持続化給付金の不正受給であったり、「Go To イート」の不適切な使い方といったような事です。金が欲しい、得をしたいということだけの、卑しく破廉恥な行為です。もちろんこうした行為は今に始まったものではありません。しかし昔に比べてこうした美しくない行為に対する忌避が薄れてきているように感じるのです。物、金、快楽を求め、そのためなら恥も外聞もなく、人としての矜持をさっさと捨ててしまう。我々はこの国に昔から根付いてきた美しいもの、気高いものを大切にする心をなくしてはならない。「これからは、民俗学の出番です」 これは本書の主人公の学生の言葉だが、まさにそのとおりでありましょう。