「どうなるにしろ、こうなるにしろ、あのセンセにとって、生きてるってえのは、ものを書くってことでしょ。そう考えたら、マリカさんがセンセを生かしてるんだ。__絆だねえ。ねえ、小酒井、これを愛と呼ばずして、何と呼ぶ?」
都は、曖昧に口の中で《アイアイ》とつぶやいた。早苗はいう。
「うちの母親も、常々いってますよ。《人生、愛こそほぼ全てだ》ってね」
「ほぼ?」
「うん。《愛は、貧乏以外の全てを越える》んだってさ」
(本書P160より)
意外な真実にビックリするようなミステリではない。ハラハラ、ドキドキのサスペンスでもない。涙を誘う悲話でもない。胸を熱くする感動の話でもない。まあ、ちょっぴり心温まるエピソードはありますけれど。でもですね、主人公・小酒井都はとても素敵な女性です。こんな子が側にいれば間違いなくプロポーズしますね。この小説を読むと、職場っていいなぁと思います。会社に行って、仲間と一緒に仕事をしようと言う気になります。そして夜には職場場の仲間と居酒屋に行きたくなります。心を前向きにさせるお仕事小説でした。酒飲みなら誰もがこの小説の良さが判るはず。