”YUI PRIMA”で行く『加賀北陸から信州へ ”味を極めた三軒の宿”に泊まる』旅、二軒目の宿は「リバーリトリート雅樂倶」です。メインエントランスを入るといきなりアート作品が迎えてくれる。
到着後すぐメインロビーで菓子と飲み物が供される。
部屋に入るといきなり千住博氏の「フォール」が飾られた壁が目に入る。部屋は清潔感があり光があふれる。南側の窓は神通川第3ダムに面しており風と緑が感じられ、北側のベッドルームの窓からはアート作品が鑑賞できる造りとなっている。我々の部屋からは鯉江良二氏の「みどり」を見下ろすことができた。
ベッドに寝っ転がって見上げるとコンクリートの壁の向こうに青空が見え、風に木の枝がそよいでいた。
洗面所と浴室は南側にある。浴室は硝子越しにダム湖と山の木々を望み、開放感あふれる。
我々は二階の部屋に泊まったが、部屋のすぐ近くにはライブラリーがある。書痴たる私にはまるで天国のようなところである。
館内をぶらぶらしているといたるところにアート作品がある。
月齢(西川慎)
水の中の月(西川慎)
誰が見ても草間彌生。
建物の外に出てアートウオーク。
さていよいよ夕食です。訪れたのは館内地下にあるフレンチレストラン「L'evo」(レヴォ)です。
案内されたテーブルは木肌を活かした素朴なもの。ナプキン、メニュー、カトラリーがテーブルの抽斗に入るようにしつらえてあります。出てくる料理ごとに抽斗から出して使うのでテーブルの上はスッキリしています。テーブルは、富山の下尾和彦 ・下尾さおりさんのユニット「SHIMOO DESIGN」製。テーブルの上に敷かれているクロスは「松井機業」の「しけ絹」を用いた美しいもの。その上に箸がはじめからセットしてあります。私のようにナイフとフォークを使い慣れない者にはありがたい配慮です。おまけにこの箸、凝った造りです。「箸factory 宮bow」製とのこと。凝った造りといえば、水を入れてくれるグラスにしても、底が丸くなっており指をあてると揺れる。しかし倒れることはない。ちょっとした遊び心と実用性を兼ねている。凝ってますね。
メニューです。抽斗の中にしまってありました。これも「しけ絹」を使ってあり、字が書いてある方は絹織物、裏は紙の肌ざわりです。
まず選んだ酒は「羽根屋 純米吟醸 煌火(きらび) 生原酒」。立山の水で仕込んだ酒らしくピュアな印象。香りは華やかで、ふくよかな甘みがある酒です。まさに料理の幕開けにふさわしい酒でした。
~prologue~
料理のはじまりに供されるのは5皿のプロローグ。
〈甘海老とバジルをあわせたタピオカのガレット〉
料理も素晴らしいが、驚きは料理が盛られた器。富山県高岡市の工芸作家・釋永維さんの無数の穴の空いた金属。材料は銅と錫が使われているようだ。いきなり意外性のある鮮烈なイメージはL'evoの記憶として刻まれることだろう。
(グジュール)
山羊チーズでしょうか。風味が素晴らしい。器は「能作」の形の変わる籠。谷口シェフの地元愛は素晴らしい!
赤ビーツのメレンゲはお菓子のようにサクッと甘い。レバーペーストをサンドしてあります。これ自体がアート作品です。
フリットといって良いのかどうか。素揚げではなく、僅かに衣がついています。枝に付いたままのコシアブラの新芽を揚げてあるのが贅沢。
(高野もなか屋の最中 リエット)
八尾町の「高野もなか屋」の最中の皮にリエットが忍ばせてあります。最中の皮が香ばしく焼いてあり、サクサク。甘い餡をイメージして口に入れると、中に包んであるリエットの塩気が意外でちょっとした驚きを感じる。下に敷いてある麦芽にナッツを合わせたものも香ばしく美味しい。器は「すずがみ」おそらく「syouryu」のものでしょうか。錫の薄い板で、折り紙のように自在に折り曲げられる。
パン皿とバターナイフは木製。一つ目のパンは米粉を使ったもの。バターの入った器がひんやりとした感じで、木の温もりと対極にある。このあたりの演出にしびれます。
~新湊 神経締め真鰯~
芽ネギが鮮烈な風味を、キャビアがほどよい塩味を加えて絶妙。これは酒がすすみます。
~大山町 月ノ和熊~
硝子の器は、富山のガラス作家・小島有香子さんのもの。美しい。熊の肉を食べるのははじめてです。熊に食われることはあるかもしれないと思っていましたが、まさか熊を食うとは・・・想定外でした。
二杯目の酒は「満寿泉 純米大吟醸 R 生」。ルージュのラベルがなまめかしい。シャンパン酵母で醸した酒だそうです。あまりお目にかからないレアな酒ですね。大吟醸らしくスッキリとしながらもほのかな色気を感じます。
~四方 ホタルイカ~
富山と云えばホタルイカははずせませんね。イカの黒作りを合わせたソースが美味い。山椒のアクセントが鮮烈。
~婦中 Virgin egg~
Virgin egg ってのはその鶏がはじめて産んだ卵。白いソースはチーズ(たぶん山羊)が使ってあったと思う。(記憶が曖昧です (^^ゞ) 最初、チーズの風味が強烈でうっと思ったのですが、二さじ目からはそれがクセになって止まらない一品。
三杯目の酒は「勝駒 純米」。高岡市の清都酒造場で醸された酒。小さい蔵で少量しか生産しないので、なかなか手に入らないと聞きます。純米酒にしては上品な甘みを感じる。冷えた温度のせいかもしれない。燗にしたら化けるかも。フレンチレストランで燗を頼んだらどうなるのだろう。対応してくれるのかな。
~L'evo鶏~
見た目、黒い足がグロテスク。しかし、若鶏の身はほどよい焼き加減。中に米が入っていました。ピリッとしたソースをつけるとなるほどベストマッチ。フィンガーボウルの中は紅茶でしょう。良い香りがしました。
またまた酒をおかわり。「苗加屋 無濾過生」。
~新湊 ノドグロ~
黒トリュフがたっぷりかかった一品。ソースに酒粕が使ってあったような・・・(記憶が曖昧 ^_^; )
三つ目のパンはバゲット。
~富山県産豚~
分厚くジューシーな豚がたまりません。もうお腹いっぱいだったのですが、あまりの美味しさにペロリと食べてしまいました。付け合わせのクレソンが爽やか。
~婦中 苺~
パリパリにドライな苺が飴のように甘い。苺をこんなふうに食べたのははじめてです。
〆に菓子とエスプレッソ。チョコレート味でサクッとした歯触り。中に酸味のあるドライフルーツが入っていたような・・・ またまた記憶が曖昧。かなり酔っ払い状態だったようです。
一夜明けて、というか未明に起きだして朝風呂。早起きは大浴場独り占めの得。
部屋に戻って、あたりが明るくなり始めた頃、今度は部屋風呂に入りました。夜はシャワーだけですませたので、朝はぬるめの湯を張ってジャグジーを楽しみました。薄暗かった景色が、時間が経つにつれ鮮明になってゆく。ダム湖のグリーンが目にまぶしい。極楽、極楽。いや、ここは雅樂倶ですけれど。
朝ごはんは7:00から。我々のように早起きの客は珍しいようで、地下一階の和食レストラン「楽味」に一番乗り。奥の個室に通された。庭に面した個室でゆっくりと取る朝餉は贅沢だ。
メニューはこれ。
写真左上の緑の和紙で蓋がしてあるのが「富山の大豆」。自家製の豆腐です。
浅漬けの入れ物も美しい。
浅漬けが美味しそうなので、おもわず「寿泉 純米大吟醸 R 生」と注文しそうになったが、「目覚めのドリンク」(林檎ジュースとほうじ茶)を持ってきてくれたのでやめておいた。私は紳士ですからねぇ。
朝ごはんのメインはなんと云っても「土鍋ご飯」。分厚い土鍋で炊いた御飯は、朝食時間に炊き上がるように準備してあり、炊きたてジャストインタイム方式で供される。御飯の美味さは筆舌に尽くしがたい。香りが違うのだ。米粒も立っている。
「手作り せいろ蒲鉾」がまた感動ものです。蒸し上がりで香り、食感ともに最高の状態。そういえば近ごろおいしい蒲鉾に出会うことがなくなった。こうしたものを食べるとスーパーマーケットで買った蒲鉾は食べられなくなります。
「お造り」 左からほたてと甘エビとカジキマグロが昆布締めにしてある。思わず「寿泉 純米大吟醸 R 生 を一合!」と云いそうになったが、やめておく。私は朝湯が好きでも小原庄助さんではない。紳士なのだ。ちなみにカジキマグロは「マグロ」と言ってもスズキ目、マグロはサバ科の魚である。豆知識。
食後、小一時間散歩して戻るとバーにドリンクが用意してあった。宿泊者は無料で飲める。
以上、なかなか良いお宿でした。次回は二泊して和食とフレンチのディナーをいただきたい。自転車を輪行してきてもいいな。