佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

東加古川「森樹(しんじゅ)」にておとなの飲み会

2020/02/11

 年に1、2回不定期に集まってうまいものを食べ、出席者おすすめのうまい酒を飲む会。いつの間にか出席者の間で「おとなの飲み会」という名前で通っている。

 今日の開催場所「森樹」は女性陣のお気に入りの店。料理がうまいと評判だ。良い酒も置いているらしい。しかし、今日飲む酒はH君が独自にセレクトしたもの。後で紹介するが、このセレクトが素晴らしかった。

 酒のメニューに目を通したがなかなかのものです。欲を言えば、もう少し日本酒を充実していただきたかった。ただし日本酒は保管温度にほかの酒以上の気づかいが必要で場所を取るので難しいところ。もし常に新しいものを仕入れ、更新していらっしゃるならそれはそれで文句はない。客はその日のおすすめを素直に飲めば良いのだ。「仙介」も「奥播磨」も決して客をがっかりさせるような味ではない。それどころか料理の味を引き立てるに違いないものだ。

 さて、我々が飲む酒のリストである。”IDENTITYとFUTURE”と題してある。身元と未来ということか。なるほど、日本酒でありながらワイン酵母で仕込んだもの、ワインでありながら日本酒酵母で仕込んだもの、フランス産の米で仕込んだ日本酒など、素性が様々で、実験的、挑戦的な造りは未来の可能性を感じさせる。

 茫茫たる記憶をたよりにそれぞれの酒の素性なり飲んだ印象なりを記しておく。

『千代むすび SORAH』(千代むすび酒造、鳥取県

 写真のリストに書いてあるように、SORAHには「美しいオーロラ」「朝焼けの星」という意味があるそうです。シャンパンのように発砲しており乾杯酒としてふさわしい華やかさがある。ボトルも日本酒というよりスパークリングワインのものだ。炭酸を加えているのではなく瓶内二次発酵の手法による発砲とのこと。これもワインでよく使われる手法。やわらかい米の旨味を爽やかな酸味が引き締め、泡が口中で華やぐ酒。清酒に違いないがアルコール度数は通常の清酒より低いので柔らかく感じられ飲みやすい。

 

『越後鶴亀 ワイン酵母仕込み 純米吟醸』(越後鶴亀、新潟県

 原料は米(山田錦、五百万石)だが酵母がワインという酒。アルコール度数が低い(13%)のはワイン酵母で仕込んだが故か。ベースは甘い。しかし同時に強い酸味があり、そのバランスで甘ったるいとまでは感じない。後味のキレも良い。少し苦みが残るがこれが日本酒の”IDENTITY"ってやつだろう。

 

『ぎんの雫 Goutte D' Argent』(ヴィニャ・マーティー Vina Marty  チリ)

 ソーヴィニヨン・ブランを日本酒酵母の「協会7号酵母」を使って醸したワイン。ワイン醸造家のパスカル・マーティー氏と「獺祭」の旭酒造社長・桜井博志氏、そして漫画「神の雫」の亜樹直氏が協力して生み出したとのこと。日本酒酵母を使用したのは通常のワインの醸造より低温で長期醗酵させるため。「協会7号酵母」は長野県宮坂酒造の酵母で真澄酵母とも言われる吟醸香の高いタイプである。飲んだ印象は「やわらかい」ということ。ソーヴィニヨン・ブランというとシャープな味わいを想像するが、むしろ厚みを感じる味わい。ワインでも日本酒でもない。いやワインであり日本酒でもあるという新しい酒かもしれない。和食に合わせたいワインですね。HPを読んで知ったのだが、酸化防止剤の使用を極力抑えているとのこと。これはありがたい。私は経験的にワインを多く飲めない体質だと感じている。たくさん飲むと頭が痛くなることがある。純米酒ではそんなことはない。確証があるわけではないが、私はその原因が酸化防止剤にあるのではないかと思っている。その意味でも今後注目したいワインです。

 

『ルヴュー・ニュメロ・ヌフ No.9』 (ドメーヌHM、フランス)

『ぎんの雫 Goutte D' Argent』がソーヴィニヨン・ブランと協会7号酵母の組合せなら、こちらはシャルドネと協会9号酵母の組合せ。協会9号酵母といえば熊本の酵母。その特徴は低温でよく発酵し、味は酸味を抑えて香り高いのが特徴。柑橘系の味わいは甘すぎることなく洗練されている。しかし、先ほど飲んだ『ぎんの雫』に比べるとふくよかな味わい。このあたりブドウの違いによるものなのか、酵母の違いによるものなのかは判らない。おそらくその両方なのだろう。

 

醸し人九平次 CAMARGUEに生まれて』 (萬乗醸造、愛知県)

 CAMARGUE(カマルグ)とは南仏プロヴァンス地方の地名。イタリアに近い陽光ふりそそぐ地。そこで栽培されたマノビという米を萬乗醸造が名古屋で醸した酒。萬乗醸造では既にスタッフがフランスに渡り、彼の地で日本酒の醸造を始めており、米もカマルグの農家に委託して作らせているとのこと。米はフランス生まれであっても、日本酒です。当たり前のことです。H君のいう”IDENTITY”(身元)の意味は、この酒においても興味深い。色は若干黄色みを帯び、ほのかな吟醸香がある。苦みのある後口もきちんと九平次でした。

 

『2014PG(プラチナがんこ)』 (仲村わいん工房、大阪府

 カベルネ・ソーヴィニヨンメルローを使ったワイン。素性は南河内。私などワイン事情に疎い者には大阪のワイン?とバカにしてしまいそうですが、大阪は昭和初期には甲州より多くのブドウを栽培していたそうです。日本のワイン通に大人気らしい。渋みも酸味もしっかりとワインらしい味わい。「がんこ」という名に似合わず贅沢な気分になる味でした。

 

『ナインリーヴズ クリア』 (竹廣株式会社 ナインリーヴズ蒸留所、滋賀県

 一番最後に控えしは、なんと国産ラム。しかも滋賀県産。といっても私はこれを飲んだことがあるのだ。確か神戸の「えん」という中華料理屋だったと記憶している。一緒に食事をした仲間とワイン、ウイスキーと次々空けて、なにか別のものを言ったときに店が出してきたのがこれです。

 ボトルも色合いもピュアそのもの。しかしラム酒らしい強さと華やかさをもつ。ラムも日本人の手にかかればこうなるのかと感動する代物です。

 

 いやはやH君の用意してくれた酒のラインナップは凄かった。日本広しといえど、一夜にこれだけの酒を飲めたのは我々だけだろう。今夜集った8名は望外の果報者でありましょう。

 H君に心から感謝。