佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『一杯飲んで帰ります 女と男の居酒屋十二章』(太田和彦:著/だいわ文庫)

2023/07/20

『一杯飲んで帰ります 女と男の居酒屋十二章』(太田和彦:著/だいわ文庫)を読んだ。

 まずは出版社の紹介文を引く。

“居酒屋で見えてくる互いの本音、人柄。お酒が人の心を裸にする。あなたの心も。でもいいじゃないですか。それが普段の姿よりも魅力的で、深ければ。お酒にはそういう力があります。しかし、女と男では表れ方が違う。それを知っていて居酒屋に入れば、酔った相手を寛容と好意で見られます。あなたもそう見てもらえるのならば安心だ”。女と男、作法は違っても、居酒屋に求めるものは同じ。居酒屋の人間模様を知り尽くした第一人者が、「居酒屋」の入り方、過ごし方、そこで得られるものを「前編」で「女性」、「後編」で「男性」について十二章ずつまとめた一冊。

 

 

 男には居酒屋で独り呑む時間が必要だ。連れがないと暖簾がくぐれないなどと情けないことを言ってはいけない。仲間と行く居酒屋も良いものだが、むしろ見知らぬ人の中で孤独を楽しむことこそ居酒屋での過ごし方と知るべし。独り酒は男だけのものではない。女が独りカウンターで背筋を伸ばし猪口を口にする。カッコイイではないか。要は男も女も大人でなければならないということだろう。人が大人であるかどうか、それを計る方法はさまざまあろうが、独りで居酒屋の暖簾をくぐれるかどうかもひとつの物指しだろう。

 本書はもともと雑誌『野性時代』の連載「居酒屋へ、あなたと」をまとめたかたちで2012年に刊行された『男の女の居酒屋作法』(角川書店)を改題し、 2022年に大和書房から文庫で復刻出版された。

 太田氏によると、連載当時あまり女性には見向きもされなかった「居酒屋」の入り方や過ごし方、そこで得られるものなどを十二章(女性版)にまとめたという。その一年の連載の後、もう一年、男性版の十二章を書くことになったそうです。

 一話一話に紹介される実在の居酒屋が実に魅力的だ。下高井戸「居酒屋おふろ」、代々木上原「笹吟」、四谷「ととや」・・・と行ってみたい店ばかりだ。女性向け12軒、男性向け12軒が紹介されているわけだが、書かれたのが十年以上前のこと、今では閉業したらしい店(自由が丘「銀魚」、大塚「こなから」、恵比寿「さいき」、門前仲町「浅七」)もある。残念だが世は移ろうもの、致し方あるまい。私が行ったことがあるのは湯島「シンスケ」と根岸「鍵屋」の2軒のみ。一割に満たないが、関西在住とあってはこれまた致し方無いところ。折を見ていつか行こうとGoogleマップにせっせと☆印を付けたが、いったいいつのことになるやら。それでも新宿の「池林房」に行き、ひとり酒を飲んでいると、そこに太田氏と椎名氏が現れ・・・・などと夢想し悦に入っている。ほとんどビョーキですな。