佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

ナマコのからえばり

若い男たちよ。

ズボンをあげろ。アメリカのヒップホップ系の黒人がズボンをちょっとズリさげて頽廃を気取ってはじめたのを日本の足の短い若者がやると幼児がうまくズボンをたくし上げられずに便所からヨチヨチ外に出てきてしまったようでまことにいたたまれない悲しい光景になってしまう。あれをみると後ろから行ってひょいとズボンを両手でズリさげてみたくなって困る。若者たちよお前らのパンツは愚かで汚い。

                             (本書P144-145より)

 

 

『ナマコのからえばり』(椎名誠・著/集英社文庫)を読みました。

 

まずは出版社の紹介文を引きます。


 

好きなサケの肴はウニ・ホヤ・ナマコ。ある日シーナは自分の名前シイナマコトのなかにナマコがいるのを発見する。いやます親近感。海の底にころがって、何考えてんだかわからないナマコもときには月見て吠える。週刊文春連載コラム「赤マントシリーズ」と並行して始まったサンデー毎日の「ナマコシリーズ」は、上目づかいの遠吠えエッセイ。発熱逆上都市の怪しい夜をナマコはずんずんころがりまくる。


 

 

 

私の大好きな椎名誠氏のエッセイである。どうでも良いことかもしれないが、「私の大好きな」は「椎名誠氏のエッセイ」にかかる。これが「椎名誠氏」にかかるとすれば、多少問題をはらむのである。いや、私は椎名誠氏を嫌いではない。好きである。しかし、この好きは物書きとして好きなのであって、あるいは氏の生き方が好きなのであって、いわゆる色がからむ好きではないのだ。ほんとうにどうでも良いことを語ってしまった。かつて昭和軽薄体ともてはやされた椎名氏のおバカ・エッセイは健在である。予想どおり、脱糞、小便にからむ話も出てくる。一見、おバカではあるけれど、椎名氏が世間を見る目は正鵠を射ている。椎名氏は吠える。「若い男たちよ。ズボンをあげろ。お前らのパンツは愚かで汚い」と。まことに同感である。

特筆すべきことが一つある。「絶叫本のご案内」というエッセイがあるが、これは読んでいるだけでおぞましい。読むだけで絶叫すること間違いなしの本が紹介されているが、なかでも『魚介類に寄生する生物』は絶対読みたくない。こんなのを読んだら、私は二度と魚が食べられなくなってしまうに違いないのだ。いかな本好きな私も絶対に手を出してはいけない禁断の書である。