佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

HEARTBLUE

 親はどこに行ったか分からないよ。たぶんどっかでのたれ死んでるんだろう。当然の報いだ。世の中、ろくでもない奴が多過ぎる。あの地下でみんなが居たときにずっと考えていたよ。自分で自分のケツも拭けない奴が子供なんて作るんじゃないよって。お前たちが大人になるまで面倒みてくれた人と同じことがどうしてできないんだってさ。

                                     (本書P189より)

 

『HEARTBLUE』(小路幸也・著/創元推理文庫)を読みました。

 

出版社の紹介文を引きます。 


ニューヨークの虹の朝、市警失踪人課を一人の少年が訪ねてきた。とある事件で知り合った少年は「ペギーがいなくなったんだ」とワットマンに告げる。彼の捜す少女は一年ほど前からどこか様子がおかしかったという―。一方の巡矢も、一葉の写真に写っていた少女の行方を追い始める。二人が動いた末に明らかになった哀しい真実とは?『HEARTBEAT』に連なる青春ミステリの雄編。


 

 

 

論語子路第十三の十八に「父は子の為めに隠し、子は父の為に隠す、直きこと其の内に在り」とある。法律上正しい振る舞いも、情に適っていなければ正しいとは言えないのではないか。たまに間違ったことをしてしまうことがあっても、人を思いやり真面目に生きている者が平穏に生きられることを大切にする。小路氏の価値観はそこにあるのではないか。厳格に法を守ったとして、それが真っ当な人間を不幸にするとすれば、そのことに何の意味があるというのか。小路氏の描く世界は人を思いやる温かさにあふれている。幸せを願って真っ当に生きている人に幸多かれと祈る。