まずは出版社の紹介文を引きます。
ささやかだが平穏な暮らしが、その日、失われた。怪しい男たちが訪れた時刻から。三浦半島で小さなボート屋を経営していた渋谷は、海上で不審な船に襲われたうえ、店と従業員を炎の中に失う。かつて日本有数の登山家として知られた渋谷は、自らの能力のすべてを投じ、真実を掴むための孤独な闘いを開始する。牙を剥き出し襲いかかる「国家」に、個人はどう抗うことが出来るのか。
志水辰夫の冒険小説デビュー作。本書と『裂けて海峡』、そして『叛いて故郷』は志水氏の初期三部作と呼ばれている。克己心の塊のような男が、ひたすら自らの想いを抑制しながら強くあろうと生きていく。心情はセンチメンタルなくせにそうではないように振る舞う。クールであろうとしながら、抑えきれない熱い想い。ハードボイルドですねぇ。こういう小説は大好物です。今月3冊目のシミタツ。シミタツ節に酔い痴れております。