2021/01/08
正月三箇日は天皇杯、箱根駅伝などの中継を楽しみながら酒を吞んで過ごした。三箇日が明けてからはアニメ『鬼滅の刃』全26話を視て過ごした。”Amazon Prime Video” で無料で視聴できる。
私には少々天邪鬼なところがあり、あまりに世間が騒ぎすぎると無視を決め込むことがある。しかしまあ第一話だけでも視てみるか、無料のことでもあるしと思ってちょいと視てみたら第一話で嵌まってしまった。連日連夜、空き時間ができれば続きを視るといった状態であった。世間がざわつくだけのことはある。
私が見るに、この物語の魅力は二つ。ひとつは「甘ったれるな、強くあれ」、もうひとつは「惻隠の心」だろうと思う。
ひとつ目については第一話「残酷」で鬼に襲われ危うく殺されかけた主人公・炭治郎を助けた冨岡義勇(鬼殺隊の主軸となる”柱”のひとり)のセリフに顕著に表れているので引く。
「生殺与奪の権を、他人に握らせるな!」
「笑止千万! 弱者には、何の権利も選択肢も無い。ことごとく力で、強者にねじ伏せられるのみ!」
「泣くな、絶望するな。そんなのは今することじゃない」
「怒れ。許せないという強く純粋な怒りは、手足を動かすための、揺るぎない原動力になる」
「脆弱な覚悟では、妹を守ることも、治すことも、家族の仇を討つことも、出来ない!」
ふたつ目については主人公・炭治郎の人となりそのものだ。誰に対しても誠心誠意。真心を持って接し、どこまでも優しい。それは人を喰い血も涙もない鬼に対しても同じだ。もちろん鬼に対しては敢然と立ち向かう。ひとつ目の「強くあれ」である。しかし死闘の末、炭治郎に敗れて消え去っていく鬼に対して炭治郎は憐憫の情を示す。その鬼は自分や妹の禰豆子の命を危うくした相手である。その鬼に対して「鬼になりたくてなったわけではなかろう」という気持ちを持つ男、それが炭治郎なのだ。
「けっして甘ったれてはならない。強くあれ」「弱い者、敗者に対して苛烈でありすぎるな」というのは古来から日本人が厳しい世を生き抜き、あるいは生死をかけて戦った際に旨とした態度だ。その意味で勝者が敗者を蹂躙し根絶やしにしてしまう欧米あるいは中国のやり方とは一線を画す。『鬼滅の刃』に見る日本的美意識や価値観を物語として全世界に発信する意義は大きいと感じるのは私だけではないだろう。たかがマンガと侮るなかれ。
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