佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『ペテロの葬列 上・下』(宮部みゆき:著/文春文庫)

2021/09/23

『ペテロの葬列 上・下』(宮部みゆき:著/文春文庫)を読んだ。

 まずは出版社の紹介文を引く。

【上巻】

「皆さん、お静かに。動かないでください」。拳銃を持った、丁寧な口調の老人が企てたバスジャック。乗客の一人に、杉村三郎がいた。呆気なく解決したと思われたその事件は、しかし、日本社会のそして人間の心に潜む巨大な闇への入り口にすぎなかった。連続ドラマ化もされた、『誰か』『名もなき毒』に続く杉村シリーズ第3作。

【下巻】

杉村三郎らバスジャック事件の被害者に届いた「慰謝料」。送り主は?金の出所は?老人の正体は?謎を追う三郎が行き着いたのは、かつて膨大な被害者を生んだ、ある事件だった。待ち受けるのは読む者すべてが目を疑う驚愕の結末。人間とは、かくも不可思議なものなのか―。これぞ宮部みゆきの真骨頂。

 

 

 

 

 杉村三郎シリーズも3作目にしてますます面白くなってきた。バスジャック事件に巻きこまれた場面の面白さ。加えて、一応の解決を見た事件に残る謎の興味深さ。上下2巻にわたる長編作を全く中だるみ無く、一気に読ませるストーリー展開。ただただ小説世界に没頭し、一気に読ませていただきました。

 事件に隠れた意外な真実もさることながら、物語の最後に明らかになった三郎・菜穂子に関する大きな変化には驚きを禁じ得ない。この世に唯一無二のお似合いカップル、奇蹟の出合いと感じていただけに、おもわず「ええぇっ!」と叫んでしまったではないか。“釣り合わぬは不縁の基”と言うが、そうか、そうなるのか。こんなところにも宮部さんの探偵アルバート・サムスン・シリーズへのオマージュが現れるとは・・・・・・。杉村三郎、お気の毒。