佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『陽だまりの天使たち ソウルメイトⅡ』(馳星周:著/集英社文庫)

2021/06/04

『陽だまりの天使たち ソウルメイトⅡ』(馳星周:著/集英社文庫)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

 

人間が犬を選び、犬が人間を選ぶ。その先に生まれる信頼関係が“ソウルメイト”の証。長年寄り添った愛犬の最後の時。家族の決断とは―。(「フラットコーテッド・レトリーバー」)、自殺を踏みとどまらせてくれた一匹の犬の存在。(「フレンチ・ブルドッグ」)心に空洞を抱えて生きる人々と、そこに寄り添う犬たち。犬と生きる喜びも、犬を失う悲しみも刻まれた、一つ一つの物語が胸を打つ全七編。

 

 

 

 先月の23日に『ソウルメイト』を読み、その続編を読みたくなったもの。

jhon-wells.hatenablog.com

 

 今作も犬種をタイトルとした情感溢れる7つの物語が収められています。「トイ・プードル」「ミックス」「ラブラドール・レトリーバー」「バセット・ハウンド」「フラットコーテッド・レトリーバー」「フレンチ・ブルドッグ」「バーニーズ・マウンテン・ドッグ」といずれも涙を誘う物語ばかりだ。

 人は犬といると癒やされる。もちろんそうでない人もいるだろうが、私はそうだ。なぜなのだろう。犬には特別な何かがあるのだろうかとぼんやりとした疑問が私にはあった。本書を読んでその謎が解けた気がする。本シリーズにたびたび登場する犬のレスキュー活動をしている神という人物の言葉「犬は無償の愛を与えてくれます」がその答えだ。忠誠を誓った主人をどこまでも信じ、ひたすら慕ってついてくる。それが犬という種の特性だろう。それだけに主人となった飼い主には、それに見合っただけの想い責任が生じる。その責任を放棄し、飼うのに飽きたり、困ったことがあるとすぐに捨ててしまう飼い主がいることに心が痛む。

 本書に馳氏が神という登場人物に語らせた重要な言葉がもう一つある。「人間は過去のことを悔やみ,未来のことを思い悩む。だが、犬には過去も未来も関係ない。ただ懸命に今を生きているだけだ」 私もこれからどんどん年老いていくだろう。病を得るかもしれないし、いつかは死んでしまう。しかしそんなことは考えても仕方がない。今を精一杯生きる。できれば楽しく。それしかないのだと本書に、そして本書に登場する犬たちに学ばせてもらった。

 7篇すべて良いが、とりわけ「ミックス」と「バセット・ハウンド」「フレンチ・ブルドッグ」が良かった。