佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『長恨歌 不夜城完結編』(馳星周:著/角川文庫)

長恨歌 不夜城完結編』(馳星周:著/角川文庫)を読みました。歌舞伎町サーガ、不夜城シリーズも第三弾。いよいよ完結編である。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

歌舞伎町の中国黒社会で生きる武基裕。彼は残留孤児二世として中国から日本へやってきた。しかし、その戸籍は中国で改竄された偽物だった。ある日、武の所属する東北人グループのボス韓豪が、日本のやくざ東明会との交渉の席で、バイクで乗りつけた二人組に銃殺された。麻薬取締官の矢島茂雄に脅され、武はクスリの利権が絡むこの事件を調べるはめに陥る。手掛かりを求め、武は情報屋・劉健一のもとへと足を運んだ―。

 

 

 

 かなり意外な結末。しかし考えてみれば劉健一が小蓮を自らの手で殺してしまった時点で、この結末しかなかったのかもしれない。彼にはもう自分にそうするよう仕向けた者達に対して復讐を果たすことしか生きる目的はなかっただろう。そして復讐を果たすためには、彼は自分が最も忌み嫌っていた人間に自らを造り変える必要があった。それはもはや人間とは言えず悪鬼であった。復讐が果たされたとき、もう彼に生きる目的はない。そこに残っているのは悪鬼となった自分だけだ。生きつづけることは地獄であっただろう。馳星周氏は健一に死を与えることで救いようのない地獄を描きたかったのか。あるいは健一を死なせることで魂の安らぎを与えようとしたのか。私には後者であるように思える。

 不夜城シリーズを読み続け、ノワールに少々疲れた。完結編読了が良い頃合いだろう。心温まる物語が読みたい。『雨降る森の犬』(集英社文庫)を購入している。馳氏の小説はそれを読んで一旦打ち止めとしよう。