佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『イクサガミ 天』(今村翔吾:著/講談社文庫)

2024/03/05

『イクサガミ 天』(今村翔吾:著/講談社文庫)を読んだ。

 まずは出版社の紹介文を引く。

金か、命か、誇りか。
刀を握る理由は、何だ。
明治11年。深夜の京都、天龍寺
「武技ニ優レタル者」に「金十万円ヲ得ル機会」を与えるとの怪文書によって、腕に覚えがある292人が集められた。
告げられたのは、〈こどく〉という名の「遊び」の開始と、七つの奇妙な掟。
点数を集めながら、東海道を辿って東京を目指せという。
各自に配られた木札は、1枚につき1点を意味する。点数を稼ぐ手段は、ただ一つ――。

「奪い合うのです! その手段は問いません!」

剣客・嵯峨愁二郎は、命懸けの戦いに巻き込まれた12歳の少女・双葉を守りながら道を進むも、強敵たちが立ちはだかる――。

弩級のデスゲーム、ここに開幕!

 

 

 高校の先輩にして呑み友でもあるYさんからお借りした本。

 面白い。只只面白い。今村翔吾氏の本は羽州ぼろ鳶組シリーズの第一巻『火喰鳥』を呼んで夢中になり、以来、発刊されるごとに12冊を読んできた。他に『塞王の楯』、『童の神』、『八本目の槍』とどれを読んでもはずれなし。面白いことこの上なかった。本書も面白さという意味では同じだが、さらに純粋に面白さのみを追求しているという点で異彩を放つ。それは物語がぶっ飛んでいるからだ。

 時は明治。帯刀が許されなくなり、侍が侍であることの意味を見いだせなくなった時代。その時代に滅び行く侍たちのデスゲームが始まったという設定。天龍寺に腕に覚えのある者292名が集められ、各自に番号を振った木札が与えられた。「こどく」と名付けられた遊びで勝ち残った者に金十万円が与えられるという。当時の巡査の初任給は四円。年俸四八円というから、その二千年分を優に超える額である。「こどく」とは、参加者がそれぞれ持つ木札(一枚一点)を奪い合いながら東海道を辿って東京をめざせというもの。途中にいくつか関所が設けられ、その関所を越すためには設定された点数を持っていなければならないというゲームである。ゲームとは言え、おとなしく人に札を与える者などいるはずはなく、奪い合うことは殺し合うことに他ならない。主人公の剣客・嵯峨愁二郎は、ある目的のため「こどく」に参加することにした。たまたま参加者の中に十二歳の少女・双葉をを見てしまい、放っておけず双葉を守りながら東京をめざすことになった。果たして愁二郎は立ちはだかる敵を相手に、双葉を守りつつ東京へたどり着くことだできるのかという物語である。

 著者が「ただ面白く、大衆小説の王道を行く」と宣言したとおり、最高に面白いエンタメ時代小説に仕上がっている。凄惨な殺し合いシーンも、このゲーム性ゆえの非現実感があり、鬱々とせずワクワクしながら読める。読んでいて、その後どうなるか気になり、頁を捲る手がとまらない。読み終えた今、すぐに第二巻『イクサガミ 地』を手に取り読み始めた。

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