2025/11/05
『雫峠』(砂原浩太朗:著/講談社)を読んだ。
まずは出版社の紹介文を引く。
神山藩が舞台の『高瀬庄左衛門御留書』『黛家の兄弟』『霜月記』に連なる最新作。国を棄てるかもしれぬ。だが俺が知らぬ顔したら、義妹は死ぬ。武士の理にあらがった二人の逃避行を描く表題作を含む、四季薫る神山の原風景と、そこに生きる人々の気品が漂う作品集。山本周五郎賞作家が織りなす、色とりどりの神山のすがた。「半夏生」国の堤を支える父と弟。彼らの背中は清く大きかった。「江戸紫」藩主の病が招く騒擾を防ぐ妙案はいかに。「華の面」能を通じて思い知る、同い年の藩主の覚悟。「白い檻」神山の厳冬。流刑先での斬り合いに漂う哀愁。「柳しぐれ」町を駆ける盗人の、一世一代の大仕事。「雫峠」神山を出ると決めた、二人の間に芽生えた思い。~「神山藩シリーズ」とは~架空の藩「神山藩」を舞台とした砂原浩太朗の時代小説シリーズ。それぞれ主人公も年代も違うので続き物ではないが、統一された世界観で物語が紡がれる。
![]()
図書館で借りた本。半年ほど前に予約したのだが、ようやく順番が回ってきた。なかなか人気のようです。さもありなん。私は一昨年に『高瀬庄左衛門御留書』(講談社)を読んで砂原氏の小説にぞっこん惚れ込んだ。すぐに神山藩シリーズ第二作『黛家の兄弟』(講談社)を読んだのは言うまでもない。本書は神山藩シリーズの第四作。ん? 第三作『霜月記』を読み飛ばしているではないか。なんとも迂闊であった。すぐに図書館に予約を入れよう。
さて本書は上の紹介文にあるように短編集である。このシリーズ、いずれの作品もなんとも言えぬ情感にあふれている。それは決して激しすぎず、グッとこらえたものだが、それだけに思いの強さと深さはホンモノだ。収められた六篇のうち何篇かは男女の思いが描かれるが、それも節度があって、だからこそ切ない。いつまでも砂原氏の世界に浸っていたい。そんな風に思えるのは藤沢周平を読んだときと共通のものだ。
六篇のうち「半夏生」が特にお気に入り。
